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品川デジカメ散歩
第9回「下町・戸越銀座を味わう」 第7回「文学の道を辿る」

2004年も1カ月経過。お正月ののんびりムードもすっかり抜け切った今月は、「戸越銀座」をそぞろ歩いてみた。
戸越銀座は、直線で日本一長い商店街として有名なだけでなく、リサイクル運動や地域通貨、商店街のオリジナルブランドの立ち上げなど、新しい取り組みを積極的に行うパワフルな商店街としてもその名を馳せている。刺激に満ちた商店街を、いざ散策。


散歩マップ
品川概要
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五反田駅

JR山手線、東急池上線、都営浅草線の3線が乗り入れる五反田駅を出発。ここから東急池上線に乗車して本日の目的地、戸越銀座を目指す。
ホームに立つと眼下に目黒川の流れ、そして山手線のホームで電車の到着を待つ人々の姿が見える。東急池上線のホームは、山手線の上をまたぐように造られたため、4階建てのビルに相当する高さに位置しているのだ。ホーム周辺には視線を遮るものもなく、気分爽快。

東急池上線 五反田駅
東急池上線 五反田駅
東急池上線のホーム先端に立つ。眼下には目黒川が広がる

五反田から2駅で戸越銀座駅に到着。先程までのビル群が嘘のように姿を消し、代わりに姿を現したのは可愛らしい駅舎。小さいながらも、1日の乗降客数は約2万人というから驚きだ。
駅舎を出るとすぐ目の前に「戸越銀座商店街」が広がる。
時は江戸。江戸市中との境目に位置していたこの地は「江戸を越える村」ということで「とごえ」と呼ばれた。それが変じて「戸越(とごし)」となったということだ。この地名の由来について記された碑が、戸越八幡神社にあるので、足を運んでみるのもいいだろう。
そして駅名にもある「銀座」の文字。もともと田んぼが多かった戸越だが、粘土質の土が多く、水はけの悪さから悪路に悩まされていた。そこで関東大震災によって舗装路の改修を余儀なくされた中央区の銀座から、不要となったレンガを譲り受け排水路工事に活用。これが縁で商店会を設立する際、「戸越銀座」と名付けたそうだ。名前に「銀座」と冠した商店街は、全国に約300カ所もあると言われているが、ここ戸越がその元祖。なるほど、なるほど。

戸越銀座駅改札
東急池上線 戸越銀座駅
東急池上線 戸越銀座駅
可愛らしい駅舎。ここを1日平均2万人が乗り降りしている
商店街

戸越銀座商店街は、店舗数約400、全長1.6キロメートルに及ぶ「直線で日本一長い商店街」なのだそうだ。通りには昼間から買い物客の姿が見える。魚屋、八百屋、肉屋、洗濯屋(!)、飲食店から小間物商まで、通りの両側にはびっしりと店舗が建ち並ぶ。値段の安さもさることながら、店の人達の笑顔がいかにも温かく、思わず揚げたてのコロッケを購入。

商店街_垂れ幕

コロッケをパクつきながら通りを歩いていると、目に付いたのが「戸越銀座ネット」と書かれたグリーンの垂れ幕。これは戸越銀座商店街に位置する3つの商店会(商栄会、中央会、銀六会)からなる戸越銀座商店街連合会が提供する地域情報サービスの名称だ(http://www.togoshiginza.net/)。商店主や地元出身の大学生らが中心となってホームページを立ち上げ、地域のイベントや各店舗の紹介など、ネットを通じた情報発信に取り組んでいる。お出かけの前に、ぜひホームページのチェックを。また、地元住民が中心となった「IT講習会」の開催やリサイクルステーションの設置など新しい取り組みにも積極的だ。

戸越銀座商店街
戸越銀座商店街
改札を出ると目の前が戸越銀座商店街(写真左)、街路灯に設置された「戸越銀座ネット」の垂れ幕(写真右)

店名に掲げた店舗

大井町方面へと延びる「戸越銀座銀六商店街」。この商店街では戸越銀座ブランドの開発を行っている。パンやお酒、ソースやグラスなど、至るところで戸越銀座ブランドを目にすることができる。

  まつや米店  

また、「戸越銀座の洗たく屋」「とごしぎんざの牛乳屋」など、「戸越銀座」を店名に掲げた店舗も多い。
そうしたブランド商品を展示した「とごしふれあい処」の目の前に、小さな小さなお米屋さんを発見! なんでも「日本一、小さな米屋」だそうで、先代から続く米屋をリニューアルした際、この大きさにしたとのこと。手前の瓦屋根が載った部分が事務スペース(!!)、その奥のケースに商品が並べられている。小さいながらも立派ななまこ壁。もちろん、つきたてのお米が購入できる。

 
戸越銀座銀六商店街
戸越銀座銀六商店街
「戸越」の名を付けた店舗が建ち並ぶ(写真左)、「まつや米店」。垂れ幕と店舗の幅がほぼ同じ(写真右)
三井坂

商店街から戸越公園へと続く三井坂を上ると、静かな住宅街が広がっている。明治期、この辺り一帯の土地約3万坪を三井家が購入し、所有していたことから「三井坂」の名が付いている。当時は、鬱蒼とした森に囲まれた風光明媚な場所であったという。また現在の戸越公園や戸越小学校も三井家が寄付した土地だそうだ。

三井坂
三井坂
坂の途中に設けられた「三井坂」の石碑

三井坂を上り切ると右手に国文学資料館が見えてくる。1972(昭和47)年に設立され、国文学関係の写本や原本をマイクロフィルムなどによって保存している。木々が生い茂る敷地内は、資料収集の合間の息抜きに最適な散策路。
ホームページ上でも、データベース化された資料の一部を公開しているが、この清々しい雰囲気の中で文学の世界についてあれこれ考えるのもいいものだ。展覧会やシンポジウムなども開催されている。

国文学資料館
国文学資料館
国文学資料館
木々が生い茂る国文学資料館
戸越公園

買い物に疲れたら、戸越公園で一休み。日本造園修景協会の造園修景優秀作品にもなっているこの公園は、熊本藩細川家の下屋敷の一部だった場所。富士山を模した築山を中心に東海道五十三次の風景を現した回遊式庭園だったというが、今でも池や滝、橋などが設けられており当時の姿がしのばれる。
園内を一周すると、かなり地形に起伏があることに気付く。この起伏が、子供達にとっては絶好の遊び場のようで、積み上げられた岩や木立の影から、かくれんぼや探検に夢中になっている子供達の歓声が聞こえてくる。親子連れやあずまやで談笑するお年寄りの姿もあちこちに見え、戸越の人達の憩いの場だ。

戸越公園
戸越公園
四季折々の木々が彩る戸越公園
 


写真をスライドショーで見る本日の散歩の所用時間は約2時間。公園からの帰り道、再び商店街に向かうと通りはすっかり買い物客で溢れかえっていた。平日でさえ、この人出。戸越銀座のパワーに圧倒された。
行きはのんびり商店街散策、帰りは夕飯の食材を探しながらと二度楽しむのもいいかもしれない。

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イラスト/小湊好治 Top of the page

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