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品川デジカメ散歩
第12回「新緑の道をゆく」  

桜の季節が終わると、やってくるのがゴールデンウィーク。遠方に足を延ばすのも良いけれど、身近なところで楽しむのもまた一興。普段、見慣れた街でも、改めて歩いてみると意外な発見が待ち受けているものだ。
今月は、「シロガネーゼ」といった言葉にも象徴される高級住宅地、白金を起点に、緑豊かな大崎近辺をそぞろ歩いてみた。




散歩マップ
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プラチナストリート

まずは「プラチナストリート」へ。銀杏並木が続く白金台の交差点から天現寺橋へと抜ける約1.2キロのこの通りには、オープン・テラスのカフェやインポート・ブティックなどが建ち並ぶ。
通りを進むと、有機的な曲線を描いた緑色の建物が目に飛び込んでくる。これは、金色に光り輝くオブジェで知られる浅草の「アサヒスーパードライホール」と同じく、フィリップ・スタルク氏設計の建物「NANI NANI」だ。建物の外側を覆うのは、銅板。年月を経て表面にまとった緑青の色が、この通りのランドマークとなっている。

プラチナストリート
プラチナストリート
カフェでお茶する人多し

東京都庭園美術館プラチナストリートを行きつ戻りつ散策したら、再び目黒通りへ。そのまま目黒駅方向へしばらく進むと、右手に「東京都庭園美術館」が見えてくる。
20世紀初頭にヨーロッパで全盛を極めたアール・デコ様式を随所に採り入れた建物は、1933(昭和8)年に浅香宮邸として建てられたもの。美術館として一般公開されたのは、83(昭和58)年。
建物だけでなく、それを取り囲む庭園もまた美しい。池を配した日本庭園もあり、美術鑑賞後にここで一息入れる来園者の姿を多く見かけた。庭園のみの鑑賞も可能なので、ちょっと一足、延ばしてみてはいかがだろうか。

東京都庭園美術館
東京都庭園美術館
東京都庭園美術館
建物と庭園とが美しく調和している

庭園美術館に隣接するのが「国立科学博物館付属自然教育園」。庭園美術館も、この自然教育園も、かつては高松藩主松平頼重の下屋敷だった場所。
武蔵野台地の高台に位置するこの一帯は、江戸時代には武家屋敷や寺社が数多く存在する地域だった。なかでもここは、下屋敷(江戸時代)、陸・海軍の火薬庫(明治時代)、御料地(大正時代)と、歴史を重ねてきた場所で、一般に公開されたのは、49(昭和24)年。その結果、手つかずの自然が残っている。
約20万平方キロメートルという敷地の広さもさることがなら、園内には、樹齢400〜500年(!)の椎の木や、樹齢300年(!)を越す松の巨木が生育している。そしてここでは、こうした自然を「自然」のままに保存している。

自然教育園  
自然教育園

積もった落ち葉は微生物によって分解され、種子は鳥の餌となり、林が長い年月をかけながら針葉樹、落葉樹、常緑樹と移り変わっていくという自然のサイクルを感じることができる。だから足元に何気なく落ちている木の実も葉っぱも、この場所には必要不可欠な存在。夏になると、都内では珍しく、蛍も観察できるそうだ。

国立科学博物館付属自然教育園
国立科学博物館付属自然教育園
国の文化財として「天然記念物及び史蹟」に指定されている(左)。湧水をたたえた池(右)

続いては、閑静な住宅街の一角にある「池田山公園」へ。入口から奥に進むと、敷地がすり鉢状になっていることに気付く。そのすり鉢の底部に池が水をたたえている。
高台に位置するこの場所は、かつて岡山藩主池田家の下屋敷だった場所で、目黒側から見上げると「山」に見えたことから「池田山」と呼ばれるようになったそうだ。後に、この土地を品川区が購入。池田邸時代から続く池を中心に公園として整備して、85(昭和60)年に開園した歴史を持つ。
公園内は、首都高速道路からわずか300メートルしか離れていないというのに、とても静かで、鳥のさえずりが響き渡る。庭園の規模からすれば中規模だろうが、思わず長居したくなる公園だ。 池辺でくつろぐ人や砂場で遊ぶ親子連れなど、近隣住民の憩いの場となっている。

池田山公園
池田山公園
池田山公園
写真では分かりにくいが、まさに「すり鉢」状の敷地
清岸寺

池田山公園の入口で、「池田山公園及び史跡めぐりコース」と書かれた案内図を発見。先の自然教育園や、福沢諭吉永眠の碑が残る常光寺などの寺社が記されている。早速、この地図をもとに史跡を巡ることに。
歩き始めると、この地域一帯の高低差を実感する。上り下りを繰り返し、見えてきたのが「清岸寺」。ここには、品川区の天然記念物に指定された、樹齢250〜300年といわれる「桜」がある。運よく、その「桜」を目にすることができた。清岸寺の真向かいにある隆崇院の敷地にも桜の木が立ち並んでいる。桜吹雪――とまではいかないまでも、花びらが風に舞う様は、何とも風流。

清岸寺
清岸寺
右手に見えるのが、区の天然記念物の桜
 


写真をスライドショーで見る本日のお散歩は約4時間。歩いた距離は短いものの、思わず時を忘れて佇みたくなる場所ばかりだった。桜の季節は終われど、時にはこうして、若葉を愛でながらゆっくりと時間を楽しみたいものだ。

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イラスト/小湊好治 Top of the page

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