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◆ T-Mobileとデルの挑戦
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◆ T-Mobileの挑戦

ノキアの3650(以前紹介したカラー液晶でロータリー配置のダイアルパッド)が、動画が送れる初の携帯としてT-Mobileより売り出された。従来のアンテナレスのノキアファンなら違和感のないフォルムと、目を引くロータリー配置のダイアルパッド(筆者の考えるところ、やや縦長になる構造をロータリー配置のダイアルパッドでうまく隠しているギミックと思うが)と、新しい動画サービスが、基本料金にプラス月3ドルで100Kバイトのビデオ(10秒間)を10件まで送信出来る。多分に戦略的な価格設定で、これはひょっとすると成功するかも知れないと思わせる内容だ。ノキア3650本体の価格は299ドルだが、今ならリベート後199ドルとモトローラのT720と変わらない値段となり、これまた現在のアメリカ一般市民なら十分手が届く値段である。

月々の使用料をT-Mobileのウエブサイトで調べてみたが、ナショナル・レート・プラン(アメリカで一般的な全米カバーで長距離やローミングが無料)が月300分迄で29.99ドル、月600分迄で39.99ドル、そして週末は無制限使用となっている。但し、ここにはかなりうまいマーケティング戦略的な設定がしてあって、600分迄39.99ドルのプランでは、テキスト・メッセージは受信のみで発信できない。そして300分迄29.99ドルのプランでは500件迄のテキスト・メッセージが送信出来るように設定されており、一見安いようだが、沢山話をし、かつテキスト・メッセージも沢山やり取りする人は、追加料金で、簡単に月40ドル以上の出費となるだろう。アメリカでは州によって違うが、携帯基地局やインターネットの整備のための税が何種類もあり、合計で15%以上の税金を取られてしまうので、実質の支出は50ドル近くになるだろう。

最近はやり出している、家族プランは最大5台迄で、家族内(携帯同士)の通話は無料。合計月800分迄の非家族への通話が無料で、月69.99ドルだ。一番安いサムスンR225mやノキア3390を選択すれば、リベート後無料になる。まあ現在のアメリカの一般的な料金よりちょっと安いかも知れない。だが、ここには落とし穴もある。ノキア3650を199ドルで買って、契約すれば動画を撮って送れるわけだが、受信側でもノキア3650を持っている必要がある。即ち、最低2台を買わないと動画を送っても見ることは出来ないし、当然他のGSM(例えばAT&T)やCDMA(SprintPCSやVerizon)には送れないわけで、有る程度普及するのには時間が掛かるかも知れないが、うまくいけば飛躍的な台数の拡大が望めるわけである。もちろん現在の不景気状況から、当初それ程売れない可能性もあるが、ここでドイツテレコム資本のアメリカ資本でない会社、そしてCDMAでない会社が一番先に始めたというところは注目に値するだろう。

◆ デルの挑戦

さて、デルのプリンター事業参入は、以前から噂されていたのでそれ自体あまり驚きに値しないが、今回の相手がHPだと言うところに、はなはだ興味津々である。デルの戦略は新しい市場を開拓するというより、既存の市場で競争相手の油断を見澄まして、これを叩いてその市場を取る、という攻撃的な戦略であると筆者は見る。デルの攻撃に遭って破産寸前まで追い込まれた会社は、ゲートウエイを初めとして枚挙にいとまがない。パソコンもそうだが、PDAでも今回のプリンターでも、常に安い製品で攻撃を始めて行く(即ち消費者が飛び付き易い)。

HPでは、デルのプリンターはレックスマーク(元々はIBMのスピンオフ)のプリンターにデルのロゴが付いただけ、とその脅威を否定しているが、そのHPですらキャノン製の部品に依存しているのは、専門家の間では常識であり、かなりのマーケットシェアを失うのは確実だ。HPはコンパックの買収以来、拡大路線を取って来ているし、パソコンやPDAでかなり苦い汁を吸わされたのが、本丸のプリンター部門にとっては人ごとの様に見えるらしいのが、致命傷になる可能性を持っている。

また、デルのプリンターでは、特にインクカートリッジの交換を単に知らせるだけでなく、ボタン一つで交換カートリッジが注文出来、かつ使用済みのカートリッジをリサイクルのために無料で返送出来るなど、かなり使い勝手がよく考えられている。因みに筆者はエプソン・フォトプリンタをこの何年か使っているが、消耗品は全てまとめて安いウエブサイトで買っていて、パソコンショップでは買ったことが無いから、このデルの方法はヒットするだろうという予感がする。

筆者の会社では、白黒プリンターはHP、カラープリンターはテクトロニクスを使っているが、デルのコンピューターを導入した会社ならデルのプリンターに切り替えるところも出て来ると思われる。デルのウエブサイトによれば、一番安いカラー・インクジェットがファックス、コピー機能込みで139ドル、リベート後何と109ドルである。

さて、このような極めて挑戦的なビジネス(言い換えれば失敗したときのリスクも大きいわけだが)が、この不況下のアメリカで引き続き行われていることに、アメリカの弱肉強食経済の底力を見る思いがする。これこそ現在の日本が、マネをすべきことであり、マネが出来ることであると筆者は思うのだが、最早日本はその元気すら無くなってしまったのだろうか?

そうは思いたくないが、「ビジネスカフェ」が「まぐまぐ」から発行しているメールマガジン「アメリカベンチャー事情『風を読む』」の筆者である鶴亀彰さんのレポートで「ナルカ族とスルカ族」という話を読んで、何だか(伝え聞く)第二次世界大戦後直後の日本を思い起こしたのは筆者ひとりではないだろう。

注: ビジネスカフェ:http://www.business-cafe.com
「風を読む」のバックナンバー:http://www.business-cafe.com/2_wind/mainsub.htm



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