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◆ アメリカの無線LAN市場について
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◆ アメリカ家庭の無線LAN事情

日本では無線LANが家庭内から特定の場所へと広がりを見せているようであるが、 いわゆるホットスポットなるものはまだ見たことも使ったことも無いので、どの程度の ものなのか今度日本に帰った時にでも試してみたい。

アメリカでも事情はほとんど同じようで、一部の家庭内ではかなり無線LANが普及し つつあるようだ。これを裏づける情報として、先日TVのニュースでブロードバンド・プ ロバイダーが、無線LAN経由でそのブロードバンドを近所の人に提供しているとして、 訴訟した旨報道されていた。サンフランシスコ市などは家が壁ひとつで隣り合ってい る長屋構造が多いので、無線LANは簡単に回りの家に届く。日本でも無線LAN経由 で他人にブロードバンドを提供している人がいるのかもしれない。

私の家では同居人たちで3−4台のノートPCを無線LANでADSLにつないで使ってい るが、どの部屋でも信号が強く入るようにするためにはかなりの手間と暇がかかる。 信号強度を測るソフトがあるのでそれぞれPCにインストールしておけば信号の確認は かなり容易ではある。2階やガラージなどは信号がかなり弱くなるし、場合によっては アメリカで一般に使われているコードレスフォンの周波数帯でもある2GHzの電波と干 渉することもある。

おそらく家庭内にデスクトップPC、そして家族の誰かがノートPCを使っている場合、 家庭内に無線LANが構築されているケースが日本でも多いのではないか。このノート PCは仕事用のものである可能性が高い。家庭内でノートPCを使っている人は、アメ リカでは大学生以外にはほとんどいないであろうが、その大学生も家族とは一緒に 住んでいないことが多いので実家に帰る時以外はノートPCが家庭内にあることはな いだろう。つまり無線LANが一般の家庭内に普及するためには何か別の、2台目の PCを買う理由が必要である。

◆ マイクロソフトのタブレットPCが出て来る理由

2台目のPCはウェブを見るとかの用途が大半であり、これはリビングルームのソファ に座った状態で見るだろうとマイクロソフトは見込んでいるようだ。ウェブサーフィンな らPDA の3から4インチQVGA画面よりタブレットPCの8から10インチXGA画面の方が 良いに決まっている。キーボードは要らない。今のタブレットPCの仕様をみると家庭内 での2台目という性格付けなので、直ちに外に持ち出してポケットPCと競合するような マーケティング戦略ではないようだが、タブレットPCをスタバまで持ち出してウェブサ ーフィンしたとしてもおかしくはない。値段次第ではこちらが家庭用としてノートPC以上 に売れる可能性も大きい。驚かれるかもしれないが、アメリカでもキーボードになじめ ない人がお年よりも含めてかなりいる。富士通をはじめ日本のメーカーもタブレットPC に取り組んでいるようだが、まだまだ日本の御家芸拝見とまで行かない。泥臭い、そ してやや厚めのデザインで、ノートPCとあまり差別がついていないのでは魅力半減だ。 ものすごく薄くて、しかも剛性が高く、プラスチックらしくないデザイン(ノートPCでもこれ が決めてだったのだが)にしたら、アメリカでならかなり売れると思うがどうであろうか? 韓国勢に先を越されてしまうのだろうか?今年のクリスマス商戦にどんなものが出て くるか楽しみではある。

◆ ホットスポット・サービス

話は飛ぶが、パームネットのPDAサイトのひとつに、近くにあるスタバのコーヒーショッ プを探す検索専用サイトがある。無線LAN接続をしたくて近くのスタバを探すという用 途があるのを聞いてなるほどと思った。スタバの無線LANサービスは全米展開するこ とになっている。このスタバの無線LANは月30ドル程度だが有料である。日本のホット スポットのような無料で無線LAN接続ができる場所はアメリカではまだ聞いたことがな いが、月30ドル程度であればアメリカでも利用する社会人は多いと思われる。スタバ に1日1回以上行く人は結構多いし、トールラテなど頼んで5ドル近く払っている人も多 いからだ。昔アメリカ人が日本に仕事で来て、コーヒー1杯500円取られてリフィルも無 料ではないと嘆いていたことを思い出すと、アメリカ人も変わったものだと改めて思う。

◆ アメリカでの無線LAN展開は企業向けが先行か?

アメリカの場合、今後の展開は恐らく会社内が無線LAN化するほうが先になると思う。 不幸にしてこの長引く不況のせいでIT投資がかなり削られているので、計画はあって も実行に移せない会社がかなりあるようだ。私の会社もその例にもれず、遅れてはい るが、今年後半になって、やっと工場を丸ごと無線LAN化して、更なるeマニュファクチ ャリングを進めようとしている。

工場が無線LAN化された場合、ノートPCよりPDAやタブレットPCのほうが工場内では 使い勝手がよいのだが、タブレットPCのハードウエアはインテル社の新モバイルCPU と無線LANチップが来年初めに出るまでは、まだまだノートPCとの差別化が難しく市 場が花開くところまで行くのは時間がかかりそうだ。

その点 無線LAN組み込みのPDA(たとえば東芝のものはアメリカ市場に特化した製品だ) あるいは CFカードタイプ(あるいはSDカードタイプ)の無線LAN製品などがこれからア メリカでもどんどん出てくるように思われる(現在アメリカでは無線LANのアダプターは PCカードタイプのみでCFやSDカードタイプのものは売られていない)。

◆ PDAの勝敗を決めるのはOS

また、会社の無線LANでは、パームOSのPDAになるのか、ポケットPCOSのPDAにな るのか、はなはだ興味がつきないが、筆者の見るところ、会社用としてはポケットPC のPDA(無線LANつき)が、これから伸びて行くだろうと推測される。理由は簡単で、IT 担当者からみてマイクロソフト・ベースの方が組み込みやすいし、一般に使われている オフィス・アプリケーションが既に組み込まれていてコストパーフォーマンスが高いから だ。パームOSの自由度が高い使いやすさは、会社用としてはかえって扱いにくい物に 見られてしまうだろうし、標準のオフィス・アプリケーションが無く、後でインストールしな ければならないのも致命的だ。個人用としてはとても気に入っているのだが・・・。
パームOS5ではそのような弱点を克服すべく開発がなされているようで、いわゆるハックソ フトももう使えなくなるらしい。しかし当面従来のソフトを使えるようにするために段階的 にARMネイティブソフトに移して行くらしいので、製品の出来具合によっては、ユーザが ポケットPCに移ってしまう可能性もある。この一年、そして景気が回復する時が勝負 であろう。

◆ 商売の決め手はシステムやサービス

話が少し飛んでしまったが、要は無線LANのみでは商売になるわけではなく、無線 LANを組み込んだシステムが決め手だと言いたかったのである。言い換えれば無線 LANをどう使うのか、他の類似システム(例えばブルートゥース)との差別化」をどうす るのかなど、課題も沢山残っているが、ディファクトの仕様も固まってきており、これか ら飛躍的に伸びる可能性は高い。アメリカではこのような場合、アイディアのある人が 企業化してサービスを始め、大会社はそれが商売になり始めてからこの会社を買収 してその商売に乗り出すケースがほとんどだが、無線LANに関しては日本でもそうし た小さな企業が出てきていると聞いており、はなはだ心強い。

◆ 問題を先送りしているKAISHA

何度も言うようであるが筆者の主張は、日本のKAISHAの特徴であった何でも商売す るというデパートメント方式はすでに失敗が明らかであり、アメリカのトップ企業の例を みてもわかる通り、これからはCore Competency(コア・コンピテンシー)に特化しなけ れば利益をあげられる会社にはならないということである。このためにはリスク(特化し たが商売に失敗する)をあえて取らなければいけないという事であるが、このリスクの 中には要らなくなったビジネスを捨てるということも含まれる。要らなくなったビジネス とは儲からないものとかのことではなく、その会社にとってのCoreではないということ で、日本ではこれがまだまだできず、分社化などでごまかしていることが多いように見 える。これも失敗を見つめる文化や失敗した人を救済する社会システムが整っていな い現状ではやむをえない選択かもしれないが、問題を先送りにしているだけとも言える。

◆ 日本の半導体産業の行方

IT技術の根幹である半導体をとってみると、日本の半導体各社も最近になってやっと メモリーを切り捨てたのは良いとして、各社横並びに残った組織を分社化してシステ ムLSIをやろうとしている。システムLSIは大昔からその構想があるが、今まで成功した 会社は私の知る限りひとつもない。少なくとも社長には外国からその方面のベテラン を連れて来る、とかした方が良いと思うがそれもしていない。これでは業界重鎮の小 宮山さんが恐れておられるように、日本の半導体全滅の日もそう遠いことではあるま い。かつて何人かの大学教授たちが日本には他に真似の出来ない(半導体)技術が あるなどとのたまわっておられたが、私の尊敬する糸川博士によれば、真似の出来 ない技術などこの世に存在せず、他人は真似が出来ないと思うほど愚かなことは無い と、日本軍の真珠湾攻撃を例にとって説明されている。いわく、航空母艦を使い飛行 機で相手の艦隊や基地を攻撃するというのは世界で初めての独創的な考えで、見事 成功したわけだが、次は相手(アメリカ)も同じようなことを考え、日本の軍艦を破壊し 東京を空襲するとは、軍部は考えてもみなかった。何か失われた90年を糸川博士は 予測されていたような先見性の高い内容が書かれた本が、すでに1985年に出版され ていたのである。

◆ 経済サイクルに生き残る道

アメリカは昨年の9月11日以降、かなり高価な勉強と再思考を余儀なくされた。中近 東で紛争が起きるとアメリカの経済、特に株価に与える影響は大きい。アメリカのユ ダヤ社会がこの株式市場に与える影響も大きいだろう。事件を期にアラブ系もアメリ カにかなりの経済投資をしていることが公になった。最近ではブッシュ大統領はイラ クを(具体的にはサダムフセインを)攻撃する事を真剣に考えているようであり、これ が終わらないとアメリカ経済の本格回復も始まらないかのようでもある。よく言われて いるように、終わりの無い不況は無いのであって、本格回復が始まった時、やはりIT 関連そして企業関連の需要が大幅に改善拡大すると思われる。今からこの時に備え ていた会社がその時勝ち残るのであって、本格景気回復になってから対応しようとし ている会社は、次の不況期とされている2005年には体力が付かない(利益が上がら ない)まま潰れてしまうのではないか。日本株式会社のままでは、はなはだ心もとない。

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