「iPod」に代表される、メモリ内蔵型のポータブルオーディオプレーヤーが人気を博し、小型でデザインも凝ったものが製品化されています。今回は、音楽を大量に持ち運ぶためにこのポータブルオーディオプレーヤーに利用されている音声圧縮の謎に迫ります。
デジタルデータ化された楽曲を再生するための携帯型機器の総称です。何らかのメモリ(記録媒体)を搭載し、手のひらほどの大きさにアルバムCDを十枚〜数百枚もの楽曲を収録することが可能なメディアなのです。
ポータブルオーディオプレーヤーに大量の曲を収録出来るのは、音声データ(楽曲)をデジタルデータとして「圧縮」しているからです。 一般に、例えばアルバムCD1枚分に記録されている楽曲のデータ量は500MB〜700MBにもなります。このままでは、容量の限られた小型のメディアに何曲も保存することはできません。 そこで、音声データをCD音質をほとんど損なわないまま10分の1〜20分の1といった量に圧縮しているのです。
圧縮には人間の耳の特性が利用されており、人間の耳ではほとんど聞こえない領域をカットしたり、前後の音から中間の音を補完する領域を省くなどして、必要の無いデータを省略、間引きがされています。
ポータブルオーディオプレーヤーはこの「圧縮されたデータ」を保存しているわけですが、ここで欠かせない音声圧縮にはいくつかの形式(規格)があります。
ポータブルオーディオの対応する形式は圧縮の品質だけでなく、普及度とのバランスによって決められています。現在は2、3の音声圧縮形式に対応している機種が一般的ですが、これからのポータブルオーディオプレーヤーの進歩は音声圧縮形式だけの対応では済まないようです。 液晶のカラー化によるピクチャービューア(写真の表示)や動画ファイルの再生などはすでに一部の機種が対応しています。さらにパソコンとの連携により、インターネット上で楽曲を購入したり、音声でのニュースなどの購読設定をすることで、毎日プレーヤー側にデータが転送されるなどの仕組みを備えたものもあります。 数年後には現在の音楽の購入方法やテレビ、ラジオ視聴などの在り方を変えるメディアとなっていくかも知れません。
・フラッシュ(半導体)メモリ搭載型 楽曲の記録に半導体を用いるタイプです。現在512MB〜1GBの記録容量のものが主流で、形状による制限がほとんど無いため、サイズやデザイン性に優れています。また駆動部品が無いため、壊れにくいという特徴も持っています。
・HDD搭載型(1.8インチ以上) 一部のノートパソコンにも搭載されている1.8インチ、2.5インチといったハードディスクに記録するタイプです。大容量であることが最大の特徴で20GB〜60GBといった容量のものが製品化されています。容量あたりの値段という点で最も優れています。
・HDD搭載型(1インチ以下) 小型化が要求されるポータブル機器など向けに独自設計された、超小型のハードディスクに記録するタイプです。容量は4GB〜6GBで、容量あたりの価格、サイズという点でちょうど上記2つの中間にあたる特徴を持っています。
・mp3(エムピースリー) 動画形式の国際的な標準化組織であるMPEGにより策定された音声部分の圧縮規格の1つです。策定されたのは1992年と古く、当時のコンピュータ性能やインターネットでの配信に耐えるデータ量と品質が考慮されています。標準で元データの10分の1に圧縮されます。最も普及している圧縮形式で、ほぼ全てのプレーヤーが対応しています。
・AAC(エーエーシー) mp3と同じくMPEGにより策定された規格で、コンピュータの処理能力が上がったことでより高度な処理を行い圧縮されています。mp3の75%の容量で、同じ音質を得ることが可能と言われています。対応しているポータブルオーディオプレーヤーは、まだ少ないのですが、携帯電話の楽曲ダウンロードサービス「着うた」やポータブルオーディオプレーヤーとして人気の高いAppleの「iPod」でも標準的に採用されています。
・WMA(ダブリュエムエー) マイクロソフト社によって策定された音声圧縮形式です。上記AACと同様に低容量で高品質を実現しています。パソコンのシステムとして最も普及しているWindowsOSに標準で搭載され、CDから簡単に収録できる手軽さからポータブルオーディオプレーヤーとしてはmp3に次いで対応機種が豊富です。
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