「チン!」といえば、ほとんどの人が「電子レンジ!」と答えるくらいに、すっかり私たちの生活に欠かせない存在となっている、電子レンジ。冷たくなったご飯や、レトルト食品を温めたりと、毎日、家庭やコンビニで大活躍の調理器具です。火やヒーターなどは一切使わず、小さな箱のなかでぐるぐる回るだけで、食材をほかほかに熱くしてくれる電子レンジはどんな仕組みになっているのでしょうか。
「オーブン」と呼ばれる調理器具では、内部に設置されたヒーターがオーブン内の空気を加熱し、食べ物を周りから温めていきます。一方、電子レンジは、小さな箱の内部で、マイクロ波と呼ばれる電波が食材に当てられています。このマイクロ波は、1秒間に24億5000回も振動をしている電波です。 このマイクロ波が食べ物のなかに含まれている水分に当たると、水の分子が激しく振動します。振動することで分子同士がぶつかり、こすれあうことで、摩擦熱が生まれます。これにより、食べ物が熱くなっていくのです。食べ物の水分を熱くなることで、食べ物自体が熱いと感じられるようになります。 ガスコンロやオーブンの場合、外側からの加熱によって熱くなりますが、電子レンジの場合、マイクロ波が食べ物の内部を通過しながら水分を熱していくので、すぐに全体が熱くなるのです。 またマイクロ波は、水分を振動させることしかできません。茶碗やコップなどの食器はほとんど温められることがないのも、これらの食器は内部に水分を含んでいないからなのです。
電子レンジの内部には、「マグネトロン」という装置が取り付けられています。ここから、食べ物を温めるためのマイクロ波が作られています。マイクロ波は導波管(どうはかん)と呼ばれる通路を経由して、食べ物に放射されます。 マイクロ波は、金属に反射する性質をもっています。電子レンジの内部は、壁は金属でできており、導波管から発射されたマイクロ波が反射するように設計されています。食べ物に直接、当たらなかったマイクロ波が、壁に反射することで、きちんと食べ物に当たるようになるのです。また、扉には、ガードスクリーンが張られており、マイクロ波が外に漏れないように工夫されています。
ヒーターで加熱するオーブン、マイクロ波で温める電子レンジに続き、新たなトレンドとなりそうなのが、水で加熱する調理器具です。これは水蒸気をさらに加熱して100℃以上の高温状態にし、食べ物に噴射して、加熱していくというものです。過熱水蒸気は無色透明の気体で、食べ物の芯まで一気に焼くことで、余計な油や塩分を落とすことが可能です。昨今の健康志向にあった調理器具として人気が出てきています。さらに最近では、オーブン、電子レンジ、過熱水蒸気を組み合わせた調理器具も登場。マイクロ波で食べ物を内部から温め、余分な油を溶かし、過熱水蒸気で焼いて油を落とし、ヒーターを使ってパリッと炭火焼きのように表面をこんがりさせることができるようになりました(右コラム内の図参照)。家電メーカーの競争も「過熱」気味なので、さらに便利で美味しいごちそうが作れる調理器具が登場してきそうです。
電子レンジの歴史
マイクロ波とは?
マイクロ波は電磁波の1つです。マイクロ波は安定して伝わり、混信がほとんどなく、ノイズが少ないのが特徴です。電子レンジ以外にも、携帯電話やテレビのUHFなどの通信・放送用、 パソコンの無線LANなどに使われています。音声や大容量のデータを、マイクロ波が運ぶ役割を果たしているのです。一方、電子レンジはマイクロ波のエネルギーそのものを利用し、物質を変化されるために使われています。マイクロ波は、様々なことに使える便利な電磁波なのです。
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