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なるほどテクノロジー
高画質が魅力の「地デジ」の謎に迫る

新しいテレビやDVDレコーダーを買おうと家電量販店などに出かけると、必ず聞くのが「地上デジタル放送対応」という言葉。何となくスゴイというイメージがありますが、なかなか実態がわかりません。地上デジタル放送テレビとは、今までのテレビとは何が違うのでしょうか。


何がスゴイのか?

すでに衛星放送などでは一般的になっているデジタル放送という言葉。地上デジタル放送でも、最大の魅力はやはり高精細な画質にあります。これまでの地上アナログテレビは525本の走査線を使った縦横4対3の画面で放送していました(これをSD画質と言います)。しかし、地上デジタル放送では最大1125本の走査線を使った縦横16対9のハイビジョン画質(HD画質と言います)で放送することができます。つまり、きめ細かさが約6倍にもなるので、美しい映像を楽しむことができる、というわけです。
デジタル化され、MPEG2と呼ばれるデータ圧縮方式で放送されるため、ノイズにも強くなります。アナログ放送の場合、ビルが多い場所や山間部などでは画面の二重写り(ゴースト現象)といったトラブルがありましたが、デジタル放送ではデータの受信を補正する技術が搭載されているので、安定してきれいな映像を楽しむことができます。同様にクルマでの移動中やビル内など、アナログ放送が不得意としていた場所でも安定した映像を受信できるようになるのです。また音声もCD並の音質に向上します。AAC(Advanced Audio Coding)と呼ばれる圧縮方式を採用しており、5.1chのサラウンド音声を楽しめます。
更に地上デジタル放送では1つのテレビ局が同時に3つの違う番組を放送することも可能になります。例えば夜10時からドラマ、ニュース、バラエティを同時に放送できるのです。プロ野球中継の場合も、9時まではメインチャンネル、9時以降に延長する場合はサブチャンネルで放送するといった柔軟性もあります。
地上デジタル放送では、電子番組表を使えるのも便利です。番組表データから録画したい番組を選ぶだけで、DVDレコーダーへの録画設定を行えます。
他にも映像番組とともにデータ放送も同時に楽しめるようになっています。ニュースや天気予報、株価だけでなく、グルメ番組で紹介されたショップ情報をその場でチェックする、といったことができるようになります。テレビショッピング番組なら、商品を紹介する映像を見ながらデータ放送で購入する、といったこともできるようになるのです。


仕組みを解剖する

地上デジタル放送は、1つのテレビ局あたり6MHzの周波数帯域を14分割しています(これを「セグメント」という単位で呼ぶ)。そのうち1セグメントを隣とのチャンネルとの混信を防ぐ隙間として利用し、残った13セグメントを放送用に使っています。
ハイビジョン画質(HD画質)を放送するには、12セグメントが必要になります。一方、SD画質ならば、4セグメントあれば放送が可能です。つまり先述の「3つの違う番組を同時に放送する」というのは、12セグメントを3分割し、ひとつの番組が4セグメントを使うことで、3つの違う番組を放送できるというわけです。マルチ放送が可能になるのはこのような仕組みがあるからです。
それでは、14セグメントのうち、1セグメントは隙間用、12セグメントは放送用として使うとすれば、もう1セグメント分は何に使っているのでしょうか。これが話題となっている携帯電話向けの周波数帯なのです。
2006年4月1日から放送される携帯電話やカーナビ向けの地上デジタル放送は「ワンセグ」と呼ばれていますが、これは1セグメントを使うことから命名されました。携帯電話でも放送が視聴できるようになり、更に地上デジタル放送対応テレビはすでに累計660万台普及しています。地上デジタル放送は受信できる機器も広がりますので、これまで以上にテレビ視聴の時間が増えそうです。



まとめ

これほどまでに地上デジタル放送が話題になるのは、現行のアナログ放送が2011年7月24日までで打ち切られることにあります。それまでに地上デジタル放送に対応したテレビを購入するか、専用の地上デジタル放送チューナーを購入しないと、テレビが見られなくなってしまうのです。
これは、限りある電波を効率良く使うには、周波数の幅を多く占有してしまうアナログよりも、圧縮してデータを送信できるデジタルを採用したほうがメリットが大きいからです。2011年にアナログ放送を廃止し、完全にデジタル化することで、電波に余裕ができるので、その余った電波を他の通信に活用できるようになります。
地上デジタル放送はひとつの「国策」として、急速に普及していくと見られています。

 

     

「地デジ」はコピー制御が充実

デジタル化への移行では、「コピー制御」の仕組みが強化されます。ユーザーにとっては不便に感じるかもしれませんが、デジタル放送は何度コピーしても映像が劣化しないため、複製品が多数出回ってしまう可能性があります。そのため地上デジタル放送ではコピー制御信号を番組に載せるととともに、B-CASカードと呼ばれるカードをテレビに挿入しなければ番組が視聴できないようになっています。また「1回だけ録画可能」というコピー制御があるため、デジタル録画機器で1回は録画することができますが、更に他のデジタル録画機器へダビングすることはできません。「この番組面白いから、見てみて!」と友達にコピーして渡すということができなくなるのです。


広がる視聴可能エリア

2003年12月1日11時に本放送が開始された地上デジタル放送は、今年で丸2年が経過しました。先ごろ、東京タワーからの放送電波の出力がフルパワーとなり、視聴エリアは24都道府県にまで拡大。2006年からはすべての都道府県で地上デジタル放送が開始され、2006年末までに全世帯の約8割を超える3850万世帯で視聴が可能になる予定です。地上デジタル放送は、既存のアナログテレビ同様に無料で楽しむことができます。また放送されている内容も、今アナログで放送している番組がそのまま見ることができるのです。

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