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なるほどテクノロジー
写真のような出来映え「プリンタ」の謎に迫る

パソコンやデジカメとともに、家庭に普及しつつあるインクジェットプリンタ。今や年賀状の多くがインクジェットプリンタで作られるようになりました。家庭で手軽に写真のように印刷できるプリンタの仕組みはどうなっているのでしょうか?


写真画質をどうやって実現しているのか?

日進月歩で進化を遂げていく家庭用インクジェットプリンタ。最新の機種では、写真と見比べても、その違いが分からない程に画質が向上しています。インクジェットプリンタは、プリンタ自体の進化だけでなく、インクや用紙なども最先端の技術が投入されることにより、写真画質を実現しています。
最初にインクジェットプリンタの印刷の基本的な仕組みを簡単に解剖していきましょう。
カラープリンタは、基本4色となる、C(シアン=青緑)、M(マゼンタ=赤紫)、Y(イエロー=黄)、そしてK(ブラック=黒)のインクを微細な粒子にして混ぜ合わせ、紙に吹き付けることにより印刷を行っています。こうして4色のインクを使うことで、カラー印刷が可能になりますが、微細な色合いを表現することは難しいとされています。そこで登場するのが新たなインクです。CMYKの基本4色とは別に、赤や青、緑といった単色や、基本4色の中間色などを独立したインクとして加えることで、表現力を向上させるのです。
4色に留まらず、原色や中間色など多くの色を使って印刷することで、より自然な色調に近づけることができます。
「写真画質」を「ウリ」にしているプリンタの内部を見てみると、インクボトルがずらっと8本並び、基本の4色以外にもインクが使用されているのが良く分かります。
もう一つ、「写真画質」を実現するためにインクの素材にも工夫が施されています。
これまで、インクジェットプリンタのほとんどが、「染料インク」と呼ばれるインクを使用していました。紙への定着性や発色性、光沢性に優れるのが染料インクの優位点ですが、その一方で、オゾンや光によって短期間で色あせしてしまうのが課題となっていました。
そこで登場したのが、「顔料インク」です。顔料インクは、オゾンや光などに強いため、色あせしにくいというのが最大の特徴です。しかし、インクの粒子が大きいため、印刷物の表面が凸凹になり、光の乱反射によって発色性や光沢が低下するという問題がありました。
そこでプリンタメーカーが研究を重ね、顔料インクの粒子を10分の1までに超微粒子化することで、顔料インクの色あせしにくいという特徴を生かしながら、染料インクのような発色性や色の再現性、光沢性を実現した新たなインクの開発に成功しました。これにより、今までにない、商業印刷物に匹敵する「写真画質」を得られるようになったのです。


1兆分の1リットルのインクを飛ばす

では、プリンタは、そのインクをどうやって用紙に印刷するのでしょうか。インクジェットプリンタはインクを飛ばして印刷するのですが、その飛ばし方には大きく分けて2通りあります。
ひとつはヒーターで加熱し、発生した気泡の力でインクを飛ばすバブルジェット方式。もうひとつは電気を通すと変形する素子(ピエゾ素子)を利用してインクを飛ばすピエゾ方式です。
最近のバブルジェット方式では、1ピコリットル(1兆分の1リットル)という、超微少のインクを飛ばすことで繊細な印刷を可能にしているものもあります。
一方、ピエゾ方式は機械的な力を利用する構造であるため、色の再現を精緻に行うことができます。このような技術を使うことで、インクジェットプリンタは写真画質の印刷を可能にしているのです。



まとめ

インクジェットプリンタは、これまでパソコンにつないで利用するのがほとんどでした。しかし、最近では「複合機」と呼ばれるタイプが人気となっています。
プリンタだけでなく、スキャナやコピーといった機能が組み合わさることで、家庭内でもフルカラーでコピーを取ったり、また写真などをスキャナで読み込んでデータ化し、パソコンに保存したりといった使い方が可能になります。またデジカメを直接つないで、画像データをプリンタする、といった使い方もできます。
更に今後、注目されているのが、インクジェットプリンタとテレビとの融合です。
地上デジタル放送などによって、今後普及すると見られているデータ放送。それらの情報を気軽にプリントアウトできるように、これからはプリンタを内蔵したテレビが登場すると予測されています。高画質のテレビ放送を気軽にプリントアウトするには、まさにインクジェットプリンタの「写真画質」の技術が生かされる分野でもあるのです。
すでに大手プリンタメーカーが、ホームシアター向けのプロジェクターを販売していたり、次世代のディスプレイの開発に取り組んでいます。これは一見、プリンタとはまったく異なる異分野への参入と見られがちですが、実際はテレビとプリンタを連携させるという計画に基づいて参入しているのです。

 

     

バブルジェット方式とは

インクを装填した細い金属パイプの一部に熱を加えることにより、インクに発泡を起こし、その圧力によりインクを噴出する仕組み。 現在では、最先端の半導体製造技術を駆使し、最小1pl(1兆分の1リットル)という極小インク滴の吐出が可能となり、高解像度を実現しています。

 

ピエゾ方式とは?

ピエゾとはギリシャ語で「圧力を加える」という意味で、別名「圧電素子」とも呼ばれています。ピエゾは、インクを吐出するノズルの背面部分に配置されています。ピエゾ素子に電気を流すと歪むように変形します。その際に生み出される圧力差を利用してヘッドからインクを飛ばす仕組みです。ピエゾ素子にかける電圧を細かく制御することで歪みの大きさを調整できます。また、ノズルから中にインクを吸い込んだり、押し出したりすることも自在にできるのです。この歪みを精密かつ最適に制御することでいろいろな大きさの数種類のインクを吐出できるため、写真高画質の印刷を実現しています。


特許技術が詰まったプリンタ

例えば、一部のインクカートリッジには、メモリチップと呼ばれるICチップが内蔵されているものがあります。これは、カートリッジ内のインク残量をつねに監視し、パソコン画面上に表示する役目を果たしています。カートリッジ内をのぞかなくても、インク残量や交換時期が分かるようになっています。
また先頃、使用済みインクカートリッジに再びインクを詰めて別の会社が「リサイクル品」として販売する行為が特許侵害になるとして話題になりました。
というのもプリンタはメーカー各社が熾烈な技術開発競争を行った結果、インクの素材やカートリッジ内のICチップ、インクの吹きつけ技術など、プリンタの内部には様々な特許技術が詰まっているからなのです。その割にプリンタ本体の価格が安いのは、消耗品であるインクカートリッジを購入してもらうことで、メーカーは収益を上げているという現実があります。
メーカーとしては、割安なリサイクル品を他社に販売されてしまっては、そのビジネスモデルが大きく揺らいでしまうという背景があります。

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