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なるほどテクノロジー
どこでもブロードバンド「WiMAX」の謎に迫る

いまやインターネットは「生活の一部」といえるくらいに一般化してきています。家庭やオフィスでは「ブロードバンド」が当たり前になってきました。次に誰しもが考えるのが「外出先もブロードバンドのように快適にインターネットが使えたら」という夢です。それを実現するのが次世代の通信技術である「WiMAX」なのです。


凄いのか?

外出先でのインターネットへの通信手段といえば、携帯電話やPHS、無線LANが一般的です。とはいえ、携帯電話は第3世代で最高2.4Mbps、もしくは384kbpsという通信速度が最高です。定額制で人気のPHSも最高通信速度は408kbpsにとどまっており、決して高速とはいえません。高速通信といえば、ノートパソコンに内蔵され、いつでもどこでもブロードバンド通信が使える「無線LAN」が有名です。自宅やオフィスで最高54Mbpsの速度でインターネットが利用でき、最近ではカフェや空港、ホテルのロビーなど、無線LANが使える「公衆無線LANスポット」が急速に普及してきました。ビジネスパーソンにとっては外回り中に、重たいデータをメールで送信しなくてはならないなどといった時にも、この「公衆無線LANスポット」に立ち寄ることで、オフィスと同じ感覚でインターネットが使えるため、とても重宝な存在と言えます。しかし「公衆無線LANスポット」は、限られた場所にしか存在せず、いつでもどこでも使えるという環境まで整備されてはいません。「すぐに使いたい」と思っても、周辺を見渡して、無線LAN設備があるカフェなどを探すしか手はありません。無線LANを使うために、お腹がいっぱいでもコーヒーやハンバーガーを頼まなければいけなかったりもするわけです。
そこで、今「いつでもどこでも高速でインターネットを使いたい」という願いを叶えるものとして注目されているのが「WiMAX(IEEE802.16-2004)」という技術です。
これまでの無線LANが室内などの狭い場所を通信エリアとしているのに対し、WiMAXは更に広い範囲での通信を可能にしています。「LAN」とはローカルエリアネットワーク(LOCAL AREA NETWORK)のの略ですが、WiMAXはさしずめMAN( METROPOLITAN AREA NETWORK=メトロポリタンエリアネットワーク)として、都市部での利用を想定できる、電波が良く飛ぶ仕様となっているのです。通信速度は75Mbpsと圧倒的なスピードを誇っています。この電波が飛ぶようになれば、公園のベンチや駅のホームでノートパソコンを開けば、いつでも高速ブロードバンド通信ができることになります。


世界中が注目する「モバイルWiMAX」

ただ「WiMAX」には大きな弱点があります。それは、動きながらの利用には向いていないという点です。忙しいビジネスマンなら、電車やクルマでの移動中でも快適にモバイル通信をしたいと思うはず。しかし、WiMAXは移動中には、うまくデータ通信が行われないのです。
そこで開発されたのが「モバイルWiMAX(IEEE802.16e)」という技術です。これは、通信速度は最大75Mbpsと先のWiMAXと同等ながら、移動しながらも利用できる仕様となっているのが大きな特徴です。これにより、今の携帯電話と同じように電車や新幹線、クルマに乗りながらの利用も可能になっています。まさに次世代のモバイル通信の主役とも言うべき技術なのです。
モバイルWiMAXは、世界各国150カ所以上で、フィールド試験が行われています。日本でも2.5GHz帯の周波数がモバイルWiMAXに割り当てられる可能性があり、数年後にサービスが提供されることも予想されます。「いつでもどこでも快適な通信」ができる環境ももうすぐやってきそうです。



まとめ

モバイルWiMAXの技術は、世界中の350以上のメーカーや通信会社が熱心に開発をしている段階です。特にパソコン向けCPUメーカーが積極的に業界をリードしているため、将来的には無線LANのように、ほとんどのノートパソコンが対応すると見られています。
日本でも、携帯電話会社などがすでに実験を行っています。現行の第3世代携帯電話と、モバイルWiMAXを組み合わせ、都心部ではモバイルWiMAX、電波の届きにくい郊外では第3世代携帯電話といったような使い分けが行われていく計画です。
今後、モバイル通信は動画や音楽など情報量の多いデータのやりとりが増えていきます。モバイルWiMAXは、そのようなマルチメディア時代に適応できる次世代の技術なのです。

 

     

世界と日本の「通信事情の違い」

 
日本は、光ファイバーやADSLなどブロードバンド環境が充実し、世界でも指折りの「ブロードバンド大国」と言うことができます。しかし、このように環境が整っている国は、世界でほとんどありません。海外では、各住宅が離れていたり、また建物が古く、ケーブルを敷設できないなどの理由でブロードバンド化が遅れているのです。
そんな環境でも簡単にブロードバンドのエリアにしてしまおうというのが「WiMAX」の考え方です。都市部に「WiMAX」の基地局を建設するだけで、その周辺を一気にブロードバンドエリアにすることができるからです。「WiMAX」は日本よりも海外での需要が期待される、「ラストワンマイル」の切り札として注目されているのです。

世界で使えるモバイルWiMAX

 

今、日本では、電波の使い方を見直す動きが出ています。地上波アナログテレビ放送を2011年で終了させ、地上デジタル放送に一本化する計画があります。このように電波を効率的に使うことで、次世代のモバイル通信向けにも周波数を割り当てようというのです。先に触れたようにモバイルWiMAXは2.5GHzの電波を使って、サービスを開始しようとしています。この2.5GHzという電波はアメリカ、カナダ、アジア、中南米でもモバイルWiMAX用として使われる予定です。つまり、将来的に日本でモバイルWiMAX対応のノートパソコンが発売された場合、そのノートパソコンをそのまま海外に持って行ってもデータ通信ができるようになるかもしれません。通信の世界でも消費者に見える形でグローバル化が進んでいるのです。

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