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ユニバーサルデザイン 益田文和
Vol.010 つるつるでもひっかかる
 

毎年正月がくるたびに、餅をのどに詰まらせる事故が絶えない。人間が物を噛んで正しく飲み込むということは、実は大変複雑な動作なのである。そうした食べるための障害を克服して、少しでも安全に快適に食を楽しむための道具やサービスが考案されている。しかし、これまでは主として食器や介助などに対する工夫が多く、食品や食材自体に改良が加えられることはまれであった。
噛んだり飲み込んだりすること以外にも、食物を口に運ぶための手や腕の動き、唇や歯、舌など口腔内で熱さや冷たさを感じる機能、味覚や嗅覚など、食べることにまつわる障害は様々である。視覚も重要なことは、停電時や目を瞑った状態での食事を想像すれば分かりやすい。身近なところで、例えばメガネをかけて熱いうどんを食べると湯気で曇って何も見えなくなるという経験をした人は多いはずだ。
もし、その状態で食べ続けなければならないとしたらどうなるか? 東京のクッタリしたうどんならまだしも、相手が讃岐うどんや、きしめんや、関西系の腰のあるうどんの場合は、つるつる滑ってどんぶりから逃げようとするし、汁を撒き散らすしで、熱いは汚いは、の悪戦苦闘は免れない。箸にも棒にも掛からない状態とはまさにこのことである。

そこで登場するのが、この「うどん双樹」。袋に「切れて御麺」とあるとおり、一本のうどんの中心に、等間隔で飛びとびに切れ目が入っている。茹でるとこの切れ目が広がって箸やフォークが引っ掛かりやすくなる仕掛けだ。更にこの切れ目のおかげで汁の絡みが良いので、しこしこした食感を残しながらも、だしの味が染みて美味いと評判だ。一つの問題を解決するだけでなく、同時に新たな価値をつけてしまう。さすが大阪のユニバーサルデザインは一味違う。

株式会社ヤマカワ:
うどん双樹 100g/1袋 100円
冷凍麺 5食入り/1袋 500円

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

1991年

(株)オープンハウスを設立
現在代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している

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