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ユニバーサルデザイン 益田文和
Vol.011 グラスにはかせるフェルトのはかま
 

フェルトというのは織っても編んでもいない不思議なきれで、その歴史は古くノアの方舟までさかのぼるという。船底に敷き詰めた羊毛がたくさんの動物に踏みしめられ、その体温と湿気でフェルトになってしまったという話。現代でも、羊毛を始め色々な繊維に熱と蒸気と圧力をかけてフェルトは作られる。弾力があってショックを吸収し、磨耗に強く遮音や断熱性能に優れることから、驚くほど多くの工業製品に使われている。自動車や電気製品、楽器、インテリアから土木設備まで、緩衝部材やフィルターとして大活躍だ。皆が良く知っているのは、習字で使った緑色の下敷きや、ひな壇の緋毛氈、マジックインキの先など、どういうわけか皆懐かしいものばかり。フェルトという音にはどことなくモダンな、それでいて温かい響きがあって、あの独特の手触りを思い起こさせる。ピアノの鍵盤の蓋を開けるとおもむろに現れる赤いフェルトや、ピンバッヂの裏についている丸くて小さな黒いフェルトは、ものを大切にする想いの表れでもある。

このフェルトでできたカップのようなものは、いかにも手作りの温かみがあって思わず触れてみたくなる。フェルト作家みよしまさこさんの作品で、アクセサリーや腕時計など傷つけたくない小物をちょっと入れておくのにも便利だが、グラスなどにかぶせてホルダーとして使うととても機能的だ。グラスの中身が熱いお茶でも、冷たい水でも、刺激が直接指や手のひらに伝わらないし、グラスを持つ手が滑らない。中身が冷めにくく、ぬるくなりにくく、その上氷を入れたグラスが汗をかいても手やテーブルが濡れないですむ。ちょうど燗徳利にはかせる・・はか・まのような役に立つ。

Gallery森のことば www.morinokotoba.jp
みよしまさこのフェルトのカップ
小:(参考商品) 中:耐熱グラスつき3,990円(税込み)

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

1991年

(株)オープンハウスを設立
現在代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している

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