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ユニバーサルデザイン 益田文和
Vol.016 はやる心で小包を開ける
 

小包や宅急便が届くと、誰しも早く開けてみたいもの。しかし、ガムテープでしっかり梱包された段ボール箱はなかなか開けにくい。テープの端を爪で起こして指先でつまみ、引っ張って剥がそうとしても結構な力が必要である。力任せに引き剥がすと、紙製のガムテープの場合だと途中で破けてしまうし、布製の場合はテープが破れないかわりに段ボール箱の表面をむしってしまったりする。最近良く使われるフィルムテープは、接着力が強く透明なので、端がどこだか見えにくく取っ掛かりがつかめない。

特に、力が弱く手先が器用でもない子供とか、視力が弱く指先に力が入らない高齢者にとって、この開梱作業はやっかいで、中身を早く見たいと思うほどに気ばかりせいて手元がもどかしい。そこで刃物が欲しくなるのだが、鋏だとどこから切り始めたら良いのか分からない。かといって、鋏の刃を開いたまま片刃で切ろうとすると怪我をするから止めたほうが良い。それではと、ガムテープの真ん中にカッターナイフを突き立てて切り裂くと、中身の品物まで傷つけてしまいかねない。
そもそも、包装材の多くは梱包のしやすさばかり考えて、開けやすさまで考えていないものが多すぎる。そこで登場したのが開梱専用のカートンカッターである。箱に軽く押し付けるようにすると、本体下部のスライドガイドが引っ込んでカッターの刃が最大2.5mm程出てくる。そのままズズーッと手前に引けばガムテープだけきれいに切れる。軽く、握りやすくて安全に操作できる形も良く考えられているが、この道具の機能そのものが問題解決型のユニバーサルデザインである。
なくならないよう、ぶら下げておくための穴や、スライドカバーのロック機構、ユニット式替え刃など、細かいところまで使い手に対する配慮が行き届いている。スライドカバーにつけられた直角の溝をガイドにして紙箱の稜線に沿って切ることができるので、牛乳パックを開くのにも使える。一見地味な道具でも青、オレンジ、ピンク、グレーと、4色のカラーバリエーションがそろっているのもうれしい。

 
株式会社ミドリ
カートンカッター/本体色は青、オレンジ、ピンク、グレーの4色
益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

1991年

(株)オープンハウスを設立
現在代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している

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