一覧に戻る
COMZINE BACK NUMBER
ユニバーサルデザイン 益田文和
Vol.017 めくるめくる感動の使いやすさ
 

時々、笑ってしまうようなアイデアに出会って、ごくまれにではあるが、それが思いがけなく実用的で感心することがある。しかし、このノートの場合は感心を通り越して感動的ですらある。雑誌やノートをめくるとき、平(ひら)をたわませるようにまるめて小口を広げ、利き手の親指の腹をずらしながら、ぱらぱらとページを繰る。この、言葉で説明しようとしても複雑で分かりにくい一連の動作を、我々は日ごろから無意識にこなしている。指先の感覚とはそれほど繊細なのだが、これが加齢とともに急に衰えてくる。コインやお札を数えるのが思うようにゆかない、文庫本のページを片手でめくることができない。メモ用紙が一枚ほしいと思っても何枚か一緒に取ってしまう。雑誌のページを繰って見たい記事を探し出すのに時間がかかるようになる。ああ、そうだった、子供のころもちょうどこんな風な歯がゆい思いをして、早く大人になって何でもうまく器用にできるようになるんだと、自分を励ましたことを思い出す。でも大人になりすぎるとまた子供の手に戻るのかなあ? 今、人生80年として、10歳から50歳の40年、ちょうど半分が器用な時期で、その前と後が不器用な時期だということに気づく。

この「パラクルノ」はこれからどんどん増えてくる、昔は器用だった人たちと、もともと器用じゃない人たちのためにデザインされたノートだ。誰か見えない人の手が始めから小口をずらして用意してくれていて、「はい、めくってごらんなさい、どうです、使い良いでしょ。左手でもちゃんとめくれますよ」と言っているような優しさを感じる。
B5とA5の2サイズに罫線のパターンがあるので全部で5種類。厚さもたっぷりしていて、グラフィックデザインも30年の歴史があるCampusノートの伝統を引き継ぐオーソドックスかつ高品位。使い込み、使い切りたい逸品である。

 
コクヨ キャンパスノート 「パラクルノ」
益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

1991年

(株)オープンハウスを設立
現在代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している

Top of the page

月刊誌スタイルで楽しめる『COMZINE』は、暮らしを支える身近なITや、人生を豊かにするヒントが詰まっています。

Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2003-2015

[サイトご利用条件]  [NTTコムウェアのサイトへ]