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ユニバーサルデザイン 益田文和
Vol.018 大人のための離乳食ゼリー飲料のパッケージ
 

日ごろ丈夫な人でも、たまには風邪も引けば熱も出す。食欲の無いときは少しでも形があるものを口に入れるのもイヤで、普段平気で平らげるカツ丼やてんぷら定食の大盛りのことなど、考えるだけで気分が悪くなる。そんなときは重湯かお粥、アメリカならオートミールと相場が決まっていたのだが、それだけではどうしても栄養が偏ってしまう。
ところが、最近ではゼリー飲料という強い味方がある。もともと、スポーツ選手用に開発された栄養補給食品をもとに、ゆっくり朝食を摂る時間もないほど忙しい人のための栄養補助食品として商品化されたものだが、食欲がなく、体力が消耗しているような時こそ威力を発揮する。やがて熱が下がり気分も良くなり、徐々に食欲が出てくると、ゼリーでは物足りなくなり歯ごたえのあるものが食べたくなる。ゼリー飲料はそれまでのいわば「大人の離乳食」のようなものだともいえる。

さて、最近急速に普及しているこの新しいタイプの食品は中身も画期的だが、それ以上に革新的なのはそのパッケージのデザインである。ポリエステルなどのフィルムでアルミ箔をラミネートした袋(パウチ)は、レトルト食品や詰め替え容器に使われているものと同じ種類で柔軟性があり、手で握って押し出しても、飲み口をくわえて吸っても、ほとんど力を必要としないで、楽に中身が出てくる。製品開発当初から、あらゆる種類のアスリートをはじめ、ジュニアからシニアまでの男女全てを対象に研究されているだけあって、中身が最後まで確実に、しかも速やかに摂取できる。その秘密はスパウトと呼ばれる吸い口の成形品の袋の中に隠れた部分にある。チューブ状のもの、矢じりのような形のもの、梯子のような形のものなど、中身やメーカーによって形はいろいろだが、どれもゼリー状の内容物を効率的に飲み口へ運ぶためにデザインされている。さまざまな人々のさまざまな条件に応じた高機能食品にふさわしい、高性能のユニバーサルデザイン容器なのである。

 
益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

1991年

(株)オープンハウスを設立
現在代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している

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