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ユニバーサルデザイン 益田文和
Vol.019 片手でも使えるテープディスペンサー
 

改めて考えて見ると、日常的に何かをしながら「テープ、テープ」とセロハンテープを探していることが良くある。テープがなければのりで済むときもあるし、ホッチキスで済む場合もある。しかし、テープでなければならないことも多いのだ。「もし、セロハンテープがなかったら…」と考えると、うーむ、どうなっていたのだろう。身近な大発明とはそういうものなのかもしれない。
しかし、そのセロハンテープと言えども欠点がないわけではない。別名「粘着テープ」という通りべたべたしているから、何にでもひっつくかわりに自分自身にもひっつきやすい。いや、一番自分にひっつきやすい。特に長く引っ張り出しておいて油断をすると、片手の指先を離れたテープは静電気で引かれるようにして、あたり構わずペタッとくっつくし、自分自身に絡みついてぐしゃぐしゃになる。
この、テープパニックから逃れるためには、1.テープを長く引き出さない 2.引き出したらすかさず貼る、の二つの基本を守ることだが、それでは長い物を一気に貼ることができない。たまに、テープパニック症候群の患者らしい人から荷物が届くと、短く切ったテープでペタペタと小刻みに貼られていて、なかなか開けられない。テープを剥がすのにイライラしてつい理性を失って包み紙を破いてしまう。かくして、この厄介な神経症は伝染していくことになる。

このフィクスオン・ループというドイツ製のテープディスペンサーはそんなセロハンテープの欠点を実にクールに解決してくれる。仕組みは単純で、テープをひっくり返してセットするだけ。そうするとテープの糊のついた面が普通とは逆になるので、テープを引き出すとカッターがテープの上に来る状態になる。それで、テープを引き出しながら貼ってゆき、切りたいところでちょっとねじると、ピッと切れる*。
気づいてみれば、今まで必ず両手の指を使って貼っていたセロハンテープが片手でも扱えることが分かる! そう、これをユニバーサルデザインというのですね。

*注:このテープディスペンサーにセットされているテープは粘着力が強く、引き出すのにやや力が要るが、市販のメンディングテープに代えると使い勝手がはるかに良くなる。

 
フィクスオン・ループ (ブルー、グリーン、クリア、レッド)各1,260円(消費税込み)
(東急ハンズ新宿店調べ/輸入発売元:株式会社ラカ)
益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

1991年

(株)オープンハウスを設立
現在代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している

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