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ユニバーサルデザイン 益田文和
Vol.024 つまんで引き抜く電源プラグ
 

電気の普及はコンセントの発明に負うところがはなはだ大きいと思う。壁や床のコンセントにプラグを差し込むだけでいつでも必要なだけ電力の供給を受けることができるこのシステムがなかったら、あらゆる電気製品が常にどこかにある電源と直接つながっていなければならないことになる。そうなるとジャーポットもアイロンも掃除機も、あらゆる電気製品は決まったところでしか使えない。
その便利なプラグも、一旦電機製品をつなげてしまうとそのまま抜かずに放置されることが多いのだが、最近は待機電力のムダ使いを防ぐ上からもこまめに抜き差しすることが奨励されている。ところが、いざそれを実践しようとすると、これが思いの外、厄介である。基本的に差し込んだ状態で安定するようにデザインされているプラグは、意外と引き抜きにくいものなのである。壁などにしっかりと固定されていないテーブルタップなど、なおのこと扱いにくい。特に子供や高齢者にとっては指先の力加減だけでうまく抜くのは難しい。
そこで、プラグを抜きやすくするためのアダプターがいろいろとデザインされている。それぞれ特徴があって面白いのだが、ごつくて大げさな形をしていたり、壁からやたらに出張ってしまったり、と欠点も多かった。このユニプルグは機能と形のバランスが良く、使いやすさをシンプルな形にまとめていて色使いも気が利いている。レバーをつまむだけで軽く抜けるので、日常的な抜き差しにもストレスなしで安心して使えそうだ。
それにしても、海外旅行をするといまだに国や地域によって実に様々な形のプラグに出くわして、その規格を統一することができればそれこそユニバーサルデザインなのに、と思う。基本形というものは一度定着してしまうとなかなか変えることが難しいだけに、熟慮の上にも熟慮を重ねなければならない。ユニバーサルデザインは、将来にわたっていろいろな人が様々な使い方をすることを想定できるイマジネーションがあってこそ実現する、配慮のデザインなのである。だから皆、優しい表情をしている。

A.P.I Japan ユニプルグ(片レバー)グレー・オレンジ  プチプルグ(両レバー)グレー・オレンジ
益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

1991年

(株)オープンハウスを設立
現在代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している

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