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ユニバーサルデザイン 益田文和
「楽呑- rakuton-」小皿
「楽呑- rakuton-」小皿・煎茶椀
「楽呑- rakuton-」小皿
薬を飲むための優しさのかたち
 

毎日決まった時間に薬を飲むのはとかく面倒なもの。飲み忘れも困るし、いざ飲もうと思ってもなかなか手間がかかる。最近、調剤薬局で渡される錠剤やカプセルは、ほとんどが透明なプラスチックシートとアルミ箔との間に封入されていて、ドーム型に成形されたプラスチックの上から指で押すとアルミ箔を破ってプチッと中身が出てくるPTP包装という方式のものばかり。以前は1錠分づつ切り離せたが、薬を出さずに包装のまま飲んでしまう事故が相次いで、今は2錠より細かくは切り離せないようになっている。
あれをプチッとやったとたんに、肝心の錠剤がどこかに転がっていってしまう、という経験を誰もが一度はしているのではないだろうか。特に手に受けようと思うと大抵失敗する。そこで、食後の皿を使おうかとも思うものの、薬が皿に残ったバタートーストのクズや醤油まみれになるのがイヤで躊躇する。仕方なく新しい受け皿を探しても、大き過ぎたり小さ過ぎたり、浅ければ飛び出すし、深ければ取りにくいしと、ちょうど良いものはなかなか見つからない。
この「楽呑(らくとん)」というやきものは、薬を飲むために作られた皿と湯飲みのセット。形も色も異なる3種類の皿は手の平に乗る大きさで、それぞれ3から5つの窪みと仕切りがついている。錠剤やカプセルはこの窪みに納まって、飲むべき薬が一目で確認できるので間違いがない。朝、飲む薬は銀杏形、昼は松の葉、夜は雲形、というふうにあらかじめ取り分けてラップをかけておけば飲み忘れもないだろう。
小ぶりな湯飲みは、薬を飲むための水や白湯を入れるのにちょうど良い大きさで、丸っこくて手の中にすっぽりと納まり、口元の開き具合も良くて飲みやすい。
薬を飲むという習慣を生活の中に自然に取り入れるために丁寧にデザインされたこの道具を使ってみると、優しさとか思いやりといった気持ちは形にできるものだということが良く分かる。

楽呑- rakuton- / ミヤマプランニング

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

1991年

(株)オープンハウスを設立
現在代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している

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