テレビとコタツは、なぜか縁が深い。家族がコタツに集まってみかんの皮をむきながらテレビを観ているという、日本の昭和のお茶の間の原風景は、現実よりむしろテレビが生み出したものだったのかもしれない。そのコタツから抜け出してチャンネルを回しに行かなければならないのが面倒くさい。この消費者心理を日本のメーカーが見逃すはずはなく、1960年代にはワイヤーでつながったリモコンが、70年代には超音波式のリモコンが開発され、コタツの中からカチャカチャとチャンネルスイッチを回せるようになる。赤外線式のリモコンがすっかり定着した今では、テレビ本体からチャンネル切り替えスイッチがなくなったため、テレビの周りでリモコンを探すなどという変なことが変だと思われなくなってしまった。
それにしても、テレビに限らずあらゆる家電製品が多機能化するのは良いとして、その操作が限りなく複雑になってゆくのはどうしたことだろう。最近のテレビのリモコンなど飛行機のコントロールパネルのようだ。大体テレビなどというものは、いつもの時間にスイッチを入れるといつもの番組が映る、それが基本。もし番組を変えたかったら選局スイッチを押して見たい番組を選ぶ。いつもより音を小さく、あるいは大きくする必要があれば音量を調節する。観終わったら消す。それだけで充分。それもいちいち眼鏡なんか掛けずにできて当たり前ではないか。
その当たり前ができないと見えて、家電量販店にはいわゆる簡単リモコンがたくさん売られているが、安い代わりにいい加減なデザインのものが多い。その中でこの製品は、デザイン力に定評のあるオーディオ用品メーカーが作るだけあって、さすがに良く考えられている。大きすぎず、小さすぎないシンプルな外形。スイッチの大きさと配置も、文字の大きさと色のコントラストも申し分ない。17社のテレビに使え、地上デジタルにも対応する。これさえあればどんな複雑怪奇な最新型も「ただのテレビ」として安心して使える。 |