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ユニバーサルデザイン 益田文和
手元にあるだけで心が涼しい
 

日本の夏は蒸し暑いというのは定説だが、その暑苦しい季節を少しでも涼しく過ごすための昔ながらの工夫の数々は、正に風物詩と呼ぶにふさわしい。すだれ、打水、風鈴、花火、日傘、冷麦、かき氷、これらは俳句の代表的な季語であり、日本の夏のイメージを描くのに欠かせない道具立てであるが、夏の暑さを避けるというよりは、むしろ積極的に楽しんでしまうための知恵でもある。
とはいえ、やはり暑い時は暑いし、蒸し暑い時の汗は不愉快なものである。さらりと浴衣でも着ていればまだしも、いかにクールビズとか何とかと言っても今のところそうもいかない。この頃は乗り物や建物の中は大体冷房が効いているので涼しいようだが、省エネのため設定温度を高めにするところが多いので、どうかすると表より部屋の中の方がかえって暑く感じることも少なくない。
閉め切った部屋で室温を28度ぐらいに保っていると、半そでシャツで座ったまま事務仕事をしていれば我慢できないこともないのだろうが、動き回ればやはり暑いし、いったん暑いと感じると、ちょっと窓を開けて風を入れるような気休めもできないだけに、閉塞感に居たたまれなくなる。そもそも状況によって体感温度は異なるし、体質もあるから、一概に何度に設定すればそれで良いというものではないのだが、ほかの人が凌いでいるなら暑がりは我慢するしかない。そんな時、せめて手元に扇子でもあれば、それだけでずいぶん気持ちが楽になる。
この扇子というもの、改めて考えてみると良くできたユニバーサルデザインだ。軽い上に小さく折りたためて持ち運びしやすく、開閉しやすく、風の強弱、当てる場所など自由自在だし、右左どちらの手に持ち替えても差し支えなく、誰にでもすこぶる使いやすい。おまけになかなか姿がよい。
特にこのNATSUKIシリーズはちょっと小ぶりな6寸(18センチ)ものだが、煤竹の扇骨が大きく取ってあるので男持ちでも様になる。扇袋の裏地の色を扇面と合わせたあたり、なかなか憎いセンスである。

銀座伊東屋 オリジナル NATSUKI 扇子麻の扇袋入り 青、オレンジ、黄色、エンジ、ピンク

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1991年

(株)オープンハウスを設立

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

現在

(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。

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