日本は雨の多い国である。日本語ほど雨の呼び方を豊富に取りそろえている言語も珍しいのではないだろうか。それだけ雨の楽しみ方も知っているはずなのだが、その大切な道具立てである傘に対して、最近は随分と無頓着になっているように思われる。
考えてみれば、木や竹の骨に渋紙を張っていた和傘のころから基本的な構造は変わっていない。この間、改善点といえば折りたたみ機構やバネ式の自動開閉メカを別にすれば、柄の先が曲がってぶら下げやすくなったことぐらいだ。しかし、助六が江戸紫の傘を開いて大見えを切ったときに取っ手の先が丸まっていたんではまるで粋じゃないので、和傘の柄はまっすぐなままだ。洋傘でも折り畳み傘などの握りはそっけなくて、引っ掛けようがない。
確かに先の曲がった持ち手は、畳んだ時腕に下げたり、そこらにちょっと引っ掛けて置いたりするのには便利なのだが、公園のベンチやカフェのテーブルの縁に引っ掛けようとすると、ベンチやテーブルが低すぎるのか、傘が長すぎるのか、石突が地面に着いてしまってうまく引っ掛からず、滑って足もとに落ちることが多い。
これは杖などでも同じことで、床に転がった杖を拾うのは容易なことではない。実際、病院や銀行の窓口などで、杖を立て懸ける工夫がされているところはまだ少ない。
そこで登場するのがスウェーデン生まれの、杖と傘用ホルダー。柄のあたりの最適な高さにワンタッチで取り付けられ、カウンターやテーブルの縁に引っ掛けると、うまくバランスしてぶらぶらすることもない。目の前に掛けておけるので置き忘れることも少なくなるだろう。こんなものを見つけると、脚は悪くないのに良い杖がほしくなる。これからまた昔のように杖を持って歩くことがおしゃれな時代が来るかもしれない。 |