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ユニバーサルデザイン 益田文和
立って待っている認印
 

宅配便が普及して、以前なら郵便受けに入っていたようなちょっとした小包も配達員から直接手渡される事が多くなったような気がする。「○○さん、△△便でぇす。はい、ここに認印お願いします。」「はい、ちょっと待って」で、いつものところに…っと、ハンコがない。「あ、なければサインでもいいですよ」じゃ、ペン、ペンっと…。今度はペンがない。こういう事がよくある。
特に留守番を頼まれた子供やお年寄りなどは、何とか役目を果たそうと焦るばかり。さっき「ハンコここに入っていますから」と言われた「ここ」がどこだったか思い出せない。なぜすぐ見えるところに置いておかないのだろうか?と思う。でも、すぐ見えるところに置いたはずのハンコというものは、大体転がってどこかの隅に入り込んだり、上に乗せられた雑誌や新聞に隠れたりしていて、かえって見つからない事が多い。
これは、オフィスでも同じ事で、荷物は常に総務課に届いて担当者が処理するような規模の会社ならいざ知らず、小規模の事務所だと、やはり「ちょっと待って、ちょっと待ってね…」という事になる。
それではハンコがいつでも必要な時に、すぐ目に留まるようにするにはどうしたら良いのだ? ハンコは大体丸くて小さくて細長いのに転がしておくからなくなるので、だったら立っていたら良い。ということで、ちゃんと立ちました。しかも絶対見つかるような鮮やかな色彩を身にまとって。これならなくならないばかりか、郵便屋さんや宅配屋さんが来るのが待ち遠しい。
印鑑の歴史はずいぶん長くて、日本ではおなじみの「漢委奴国王」の金印から数えて約2,000年。考えてみればあの金印はちゃんと立っていたではないか。電子決済の時代に入って今や印鑑業界は構造不況と言われるが、明治時代に印鑑制度ができて以来、あまり使い勝手の面で工夫がなされてきたとも思えない。使い手の立場に立って考えるとまだまだやることがありそうだ。

印鑑スタンド 赤系、青系の2色 お揃いの色調の印鑑はピンク、オレンジ、ブルー、グリーンの4色

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1991年

(株)オープンハウスを設立

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

現在

(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。

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