私たちの身の回りには、いわゆる世界標準というべき製品がけっこう多い。それらは長い時間にわたって大量に生産され使われるうちに形が定まり、いったん定着すると今度は容易に変えられなくなってしまう。電球のソケットや電気のコンセント、電話線の差込口など、国際規格があるものだけでなく、缶飲料のプルトップや紙皿などのように、最初に開発したか、もしくは市場で圧倒的シェアを持つ企業の製品が、形や大きさの世界標準になってしまうことも少なくない。その場合、デザインがユーザの使い勝手の良さを考えたものであれば良いのだが、あまり考えないままにスタンダードになってしまうと、なかなか改良されにくい。
牛乳やジュースなどの飲み物は、ガラスびんやプラスチックのボトルで売られているものは、形も大きさも比較的不ぞろいだが、紙パック入りとなるとほとんどの製品が相似形である。これは、紙の飲料容器を開発した北欧の企業の製品が世界標準になったものだ。従ってヨーロッパ人の手に合わせたデザインになっているのは当然で、1リットル入りの牛乳パックは日本人の手には大き過ぎる。特に女性や子供が片手でつかんで、中身をグラスに注ぐために傾けるにはかなりの力が必要だ。高齢者も握力が不足する上、ぶよぶよして不安定な容器はつかみにくく、増して表面が結露して濡れていれば滑って取り落としそうになる。あらかじめ別の取っ手つきの容器にでも移しておく方法もあるのだが、冷蔵庫の棚の寸法までが例の紙パックに合わせて決めてあるから厄介だ。
この簡単なプラスチック製の取っ手は紙パックの標準サイズに合わせて作られているので容量違いの容器でもぴったりとはまってしっかり握れる。取っ手があるのとないのとでは驚く程安定感が違う上に、軽く感じる。同じシリーズで、開けにくいばかりでなく、一度開けると中途半端に開いたままになる紙パックの口をぴったり塞いでくれるクリップもそろっている。紙パックと同じ北欧製の製品であるところが面白い。
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