カラーユニバーサルデザイン(CUD)という考え方がある。我々は自分に見えている色が他の人にも同じように見えていると考えてしまいがちなのだが、実は色の認識の仕方は人によって異なると考える方が自然だ。民族や生活圏によっても、色彩の認識に対して異なる傾向があるという指摘や研究は古くからあって、それが芸術作品や工芸において、地域や文化圏に特有の色遣いとなって表れているという見方もある。
確かに北欧の織物や染め物に使われる青から緑にかけての豊かな階調や、アフリカのいくつかの民族衣装における鮮やかな赤、茶、黒などの色遣いを見るにつけ、色の好き嫌いや色に対する文化的意味を超えて、色彩感覚の違いというか、色の見え方の違いのようなものを感じる。一方、色彩の認識における個人差も確かに存在し、また、同じ人でも年齢による変化も少なくない。そのブレが大きいと色覚異常や色覚障がいと呼ばれる。色弱や色盲などが代表的だが、最近は加齢に伴う色覚の変化、なかでも目の病気が原因で起こる色覚異常が、生活する上での様々な問題を引き起こすことが指摘されている。そこで、色覚障がい者にとっても分かりやすく、間違うことのない、カラー印刷やパソコン画面などの表示に関する基準を作ろうというのが、カラーユニバーサルデザインの考え方だ。
講演会などでスライドを使ったプレゼンテーションを見ていると、レーザーポインターから照射する赤い光の点で画面の一部を指し示している。あの赤い点はよく目立つようだが、実は比視感度という基準によると、赤色のレーザー光に比べて緑色の方が8倍も明るく、誰にとっても見やすいということが分かっている。緑色のレーザー光を一定の強さで照射するためのIC回路を搭載したこのレーザーポインターは少々高価だが、ユニバーサルデザインを話題にする講演にはもちろん、そうでなくともスライドを使ったレクチャーの機会が多い人にとっては、装備したいプロの道具である。USBの受信機を使って画面を遠隔操作で送ることも出来る。
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