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ユニバーサルデザイン 益田文和
超軽くて軟らかいダンベル
 

何かというと運動をしろと言われる昨今である。子供は体力増強や肥満防止に、働き盛りともなれば高血圧や糖尿病予防、高齢者は体力や筋力の衰えを遅らせるために。すべて真に受けていたら、まるで一生運動するために生まれてきたような、妙な気分になる。少し前までは、質素な食事で毎日くたびれるまで体を動かして働いたから、後はなるべく体を休ませるのが普通だった。育ち盛りの子供たちの基礎体力作りか、運動選手のトレーニングならいざ知らず、誰も彼もが病気にならないために運動をするというのは、ちょっと理不尽な気もする。
それにしても運動のための道具というのはどうしてあんなに大げさなのだろうか。少しでも速く、強く、遠くへと、気合の入ったデザインばかりでは、体力作りに運動でもと思っても、道具を見るだけでくたびれてしまう。開発者が筋骨隆々の若者をターゲットにしているから、ああいう武骨なものになるのだろうか。朝起きたらまずゆっくりと手足を伸ばす。散歩しながら腕を曲げ伸ばしする。筆を持つ手を止めて手首を回す。そういうふうな、軽く、柔らかく体を動かすのにちょうど良い道具はないのだろうか。
Qsmileのシリコンゴム製のダンベルは80gと軽く、ダンベルというものは重いものだという先入観を裏切ってくれる。しかも握るとぷよぷよと軟らかく、振り回しても取り落としても人やものを傷つける心配はない。その上カラフルで楽しい。体を動かすきっかけさえつくれば、大きな負荷をかけずとも体を動かすだけで、それなりの効果はあるはずだ。このダンベルを手に取ることがそのきっかけ作りになるだろう。実際握るだけでもうれしくなるような触感を持っている。使い手の運動能力を試すような挑戦的なデザインではないけれど、誰もが手にしてみたくなる優しいユニバーサルデザインだ。

株式会社ゴムQ:Qsmile ダンベル

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1991年

(株)オープンハウスを設立

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

現在

(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。

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