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ユニバーサルデザイン 益田文和
待ちに待った毛抜きの進化形
 

毛抜きという道具は、我々が日常使う道具の中でも、毛を抜くという限られた用途のために開発されたものであるという意味で、特殊である。限られた用途ということでいえば、頭髪の手入れのためのさまざまな道具類を始め、いわゆる理美容用品は皆そうだと言える。しかし、日本人の頭髪数の平均は10万本ほどらしいが、ひとかたまりであると考えれば一部位であり、その限られた部位の手入れのためにどれほど多くの道具や薬品が用意されているかと考えると、それはそれで不思議だ。
一方、毛抜きが相手にする毛は全身に分布している。恐らく何百万本という体毛のうち、頭髪やひげや腋毛などといった優先順位の高い部位以外の、いわゆる不特定多数の体毛である。その圧倒的多数の手入れ、あるいは処理のために毛抜きというシンプルな道具しかない、という意味で特殊なのである。
毛抜きは、形も材質も一見同じに見えるのにもかかわらず2本で100円のものから一本10,000円以上するものまであり、その性能は全く違うと言ってよい。優れた職人の手になる製品は、どれほど細い産毛でもきっちりつかんでするりと抜きとる。力もいらなければ痛くもない。その代わり、先端は刃物のように鋭利なので扱いを間違えると怪我をする。
その、理美容用品のガラパゴスのような毛抜きの世界に突如現れた新種がその名もNOOK(抜く?)という先が丸い毛抜きである。年とともに頭髪が薄くなっても耳の毛や鼻毛、眉毛などはますます増えるばかりという男性は少なくない。しかも白髪はくせ毛と相場が決まっているので、気になって仕方がない。ところが目も手元もおぼつかないので、先の尖った毛抜きを扱うのは危なっかしく、何度となく痛い目に遭うことになる。この先の丸い毛抜きなら鼻と言わず耳と言わず、気にせず突っ込んで摘まめば毛が束になって抜けてくる。先端の内側が平らな円盤状になっているのがミソで、毛の生えている方向に関係なくつかめてしまうのである。毛深い高齢者にとっては何という朗報であろうか。

NOOK(ヌーク) / GO.TECH. www.nook.jp (gray, pink, blue, white)

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1991年

(株)オープンハウスを設立

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

現在

(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。

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