ナビゲーションを読み飛ばすにはここでエンターキーを押してください。
一覧に戻る
COMZINE BACK NUMBER

世界IT事情

第2回 アメリカ、ロサンゼルス発 「健康維持もメールチェックから」

道具は同じでも、使う人が違えば、その反応も違うもの。「世界IT事情」では、世界各国のお国柄をご紹介しつつ、人々のITとの関わり方を、生活者の視点でご紹介していきます。 今月は日本人にも身近なアメリカ、ロサンゼルスからお届けします。

「健康維持もメールチェックから」
検査結果はネットで、が今や常識

世界ではインターネットがさまざまな分野で活用され、人々の生活向上に大きく貢献しているが、私がアメリカで暮らすようになって特に驚いたのは、医療や健康に関する分野でのITの普及度だ。

テスト結果

ホームページ上でいつでも血液検査の結果や、予防接種などの記録を見ることができる。

たとえば医療保険。アメリカでは日本と違い、一般の人が使える公的な医療保険制度がないため、多くの人は自分が働いている企業を通して、ブルークロス、カイザーパーマネンテ(以下カイザー)などの民間の保険会社と契約する。会社によって提供するサービスは異なるが、たとえば以下は私が経験したカイザーの場合。

先日、少し体調が悪かったのでかかりつけの医師に予約を取った。予約は電話でもできるが、この保険会社では独自に病院も運営しているため、ホームページからでも予約が可能。電話だと病状、かかりつけの医師名はもちろん、保険の契約番号、住所、電話などを1つ1つ聞かれ手間がかかるが、ホームページ経由だと自分の個人情報はすでに先方のデータベースに記録されているので、これらのやりとりがいらない。希望の日時、曜日を指定してリクエストを送ると、24時間以内に予約の確認書がメールで送られてくる。日時の変更・キャンセルも簡単にできるし、ホームページ上に記録が残るので「予約日いつだっけ?」なんて忘れてしまうこともない。

数日後、医師に会った。受診中、医師は室内に設けられた共用のコンピュータに自分のIDを使ってアクセスし、私の個人データページに問診内容を次々とタイプしていく。これはいわば「デジタルカルテ」で、この病院では毎回受診するたびに体重、血圧などと共に問診の内容はすべてデータベースに記録される。医師は個々の患者に会う度に過去の医療記録をチェックし、瞬時に病歴を把握することができる。また、治療のために複数の医師に会う場合も、コンピュータを通して情報の共有が可能なため、少し離れた場所にある専門クリニックにかかる場合も、カルテを行き来させたりする必要がない。

私が渡米したのは1997年、当時はカルテのデジタル化なんてまだまだ遠い先の話だった。とあるクリニックでは、検査結果などカルテの一部をなくされたり、医師が変わった際には、前の医師が書いた治療記録が悪筆のために読めず、「これはいったいどんな処置をしたんですか?」なんて医師から逆に聞かれびっくりしたこともある。

医師との会話も増えて大満足

ちなみに10年前は処方箋も手書きだったが、最近こちらも完全デジタル化された。コンピュータを通して医師が病院内の薬局に処方箋を送ると、薬局では患者は保険証を見せるだけでスムーズに薬が受け取れるようになった。この処方箋データには、リフィル(薬の追加)数も記録されているので、例えば1ヶ月に1回、定期的に補充が必要な薬なども、リフィル回数に達するまでは処方箋なしで購入できる。

薬

デジタル処方箋のおかげで、薬局での待ち時間もかなり短くなった。

以前、別の病院で処方箋をもらったものの、薬局に行くまでの間にその紙を紛失してしまい、非常に困ったことがあった。気が付いたのが金曜日の夕方だったので、週末の間、医師に連絡がつかず、また週明けも担当の医師は不在だったので、他の医師に連絡をつけ、カルテを参照して処方箋を書き直してもらい、更にそれを受け取りに行くまでに何度となく電話をかけるはめになった。ペーパーレスは資源の節約にもつながるが、何よりもこうしたトラブルがなくなったのがうれしい。

受診してから3日後、かかりつけの医師からメールが届いた。先日の血液検査も尿検査の結果も異常ナシ。ただしコレステロール値が高いので注意とのこと。これら検査結果は、ホームページ上からログインし、自分専用のデータページでいつでも参照することができる。

一般にIT化が進むと、人と人とのコミュニケーションが減るようなイメージがあるが、私が経験した上記の例では、煩雑な手間が省けた分、医師と会話する時間も増えた。ホームページを通してメールでやり取りができるようになったので、電話して不在の時も、後からメールで直接回答がもらえるので、大いに満足している。私は、この病院以外にも歯医者、カイロプラクターなどでホームページを通して予約することができた。昼間うっかりして予約の電話をするのを忘れても、24時間営業のコンピュータでなら、いつでも予約できる。時間を見つけて、昼間電話をして、長々と待たされて、などという頃にはもう戻れない。

特派員プロフィール

佐々木朋子(ささき・ともこ)
写真スタジオ勤務を経て、フリーランスのライター・フォトグラファーとして東京を拠点に活動。1997年に渡米し、現在ロサンゼルス在住。4歳の双子の母として公私共に日夜走り回っている。オーガニック野菜を使ったエスニック料理&お菓子作りやピラティスなどが趣味。

Top of the page

月刊誌スタイルで楽しめる『COMZINE』は、暮らしを支える身近なITや、人生を豊かにするヒントが詰まっています。

Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2003-2015

[サイトご利用条件]  [NTTコムウェアのサイトへ]