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世界IT事情

第8回 ペルー、クスコ発 「失われた文明を世界に知らしめるIT」

道具は同じでも、使う人が違えば、その反応も違うもの。「世界IT事情」では、世界各国のお国柄をご紹介しつつ、人々のITとの関わり方を、生活者の視点でご紹介していきます。 今月は、インカ帝国の首都として栄えた古都クスコからお届けします。

「失われた文明を世界に知らしめるIT」
ITを駆使したアンデスの民が知名度アップに威力を発揮!

南米ペルーは日本からもっとも遠い国のひとつである。砂漠も、アマゾンもアンデスもあるペルーは、日本人が抱いている南米のイメージそのもののような国だ。マチュピチュやナスカを抜きにしてはペルーを語ることはできないが、もちろんそれらの遺跡だけがペルーのすべてではない。

世界遺産であるクスコ市街の中心に設置されたパソコンでマチュピチュに投票する人々。

日本のテレビ番組で、世界遺産の人気ランキングが行われたことがあるが、過去3回行われたその人気投票では、何とすべてマチュピチュが第1位に選ばれている。ペルーといえばマチュピチュ。マチュピチュといえばペルー。確かにマチュピチュは素晴らしいのだが、その存在があまりに大きすぎて、ペルー全体の姿はマチュピチュの影に隠れてよく見えないかもしれない。ましてや、彼の国のIT事情など、まったく想像できないのではないだろうか。
2007年7月7日、スイスの財団ニューセブンワンダーズによる新・世界の七不思議が発表された。これは世界中からのインターネットによる投票で決められたのだが、マチュピチュのお膝元クスコではパレードが街を練り歩くほどの大々的な投票キャンペーンが行なわれた。ペルーの人々、特にクスコの人々にとって、マチュピチュは貴重な観光資源である。クスコの中心にあるアルマス広場には、インターネットに接続したパソコンがずらっと並べられ、道行く人がしばし足を止めて、我らがマチュピチュに投票していた。その甲斐あって、マチュピチュはヨルダンのペトラ遺跡や中国の万里の長城などと並んで、新・世界の七不思議に選ばれた。

インターネット接続なら外出先で!日本語だってOK

日本では各世帯がインターネットをつないでいるため、外出中にオンラインできるところを探すのに一苦労することがある。ところがペルーはその逆なのだ。首都リマなどの都市はもちろん、クスコなどの観光地では、街中に「インターネット屋」がある。しかも安い。クスコでは1時間1ソル(約35円)。世界中から観光客が集まる場所だけあって、日本語や韓国語、ヘブライ語など、あらゆる言語の読み書きができるように対応している。リマの下町には、1時間0.5ソルの激安店も登場し、こちらは地元の子供たちのオンラインゲームセンターと化している。
一般的な月収が600ソル(約22,400円)あるかないかのペルーでは、パソコンを買って、インターネット回線を家に引くのはかなりのぜいたくである。しかも、朝早くから夜遅くまでインターネット屋が開いていて安いとなれば、よほどのお金持ち以外は誰も家にインターネット環境を整えようとはしない。
更に、この国は携帯電話の通話料が安い。使い放題だと1ヶ月100ソル以上もするので、庶民はもっぱらプリペイド方式だ。街角で売っているプリペイドカードは5ソルから買え、頻繁に行なわれている、通常の2倍、3倍通話できる期間限定サービスを利用する。携帯電話本体は、安いものなら50ソル程度で買えるとあって、普及率はかなり高い。

CARDキャプ

世界的な観光地だけあって、日本語をはじめ、さまざまな言語に対応しているクスコのインターネット屋。

また携帯代を安くする方法がある。街角ではプリペイドカード売りと並んで「携帯屋」が呼び込みをしている。これは、各電話会社と契約した携帯を分単位で使わせるサービスだ。例えば日本ではドコモにかけるならドコモからが安いように、ペルーではテレフォニカにかけるにはテレフォニカからが安いのである。自分が持っている携帯がA社で、かけたい相手の携帯がB社なら、A社の携帯を使わずに携帯屋にB社の携帯を借りるほうが安上がりだ。ペルー人はこうして上手に携帯を使い分けている。
かくして、インターネットではチャット、携帯ではメールと、ペルー人は豊かなITライフを満喫している。近年、アメリカ、特にニューヨークに出稼ぎに出る人が多く、インターネット屋のカメラ付きパソコンでスカイプを使って、遠くに住む家族や友人とのコミュニケーションを楽しむ姿もよく見かける。
たとえ家にパソコンがなくても、マチュピチュにインターネット投票をしたり、海外にインターネット電話をかけたりできるほど、ペルー人のIT活用能力は高いのである。

特派員プロフィール

片岡恭子(かたおか・きょうこ)
スペイン留学後、中南米を3年間放浪。パラグアイ、ベネズエラでの就労経験もあり、36カ国を歴訪。世界遺産にも詳しい。ガイドブック、雑誌記事などを多数執筆し、ラジオ、テレビ番組コーディネートもこなす。中南米、フィリピンを得意とする秘境者として活躍中。ブログ『秘境散歩』、サイト『どこやねん?グアテマラ!』。

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