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世界IT事情 ITを通じて世界の文化を見てみよう! 第18回 インドネシア、ジャカルタ発
「世界が認める携帯電話熱『ハーペーに夢中です!』」
携帯電話はステータスシンボル

「Nokiaの最新モデルを世界で一番早く手に入れた、インドネシア人!」こんなタイトルが踊る携帯専門誌。もちろんそこには「世界で一番に新製品を手にした」張本人の満面の笑みがアップで掲載され、傍らには携帯の価格が紹介されている。何と一台35万円也!!!元値は8万円くらいのものが「世界で一番」というプレミアが付いた結果、4倍以上になったのだ。ジャカルタの人々のこんな新しモノ好きの傾向にメーカーも注目し、新作の発売をインドネシアで行う企業もある。

何百という店舗が軒を連ねる携帯電話専門ショッピングモール

このショッピングモールにあるのは、ほとんどが携帯電話関連の店。見て歩くだけでも一苦労。

ここでは、一にも二にも「ハーペー」(「handy phone」の頭文字「HP」のインドネシア語読み)は必需品。そこには、電話としての機能よりも自分の社会的地位を周りに知らしめる「アクセサリー」のような役割があるかもしれない。最近はスクリーンタッチのスマートフォンが人気を集めている。
ただしこれは、インドネシアの、たった数%しかいない富裕層の話。それでは月収3万〜4万円程度の平均的サラリーマンはいかに「アクセサリー」を手に入れるのか…。それは分割払いの利用である。「スクリーンはカラーじゃなきゃオシャレじゃない!」「カメラもついてなくちゃ彼女にいい顔見せられない!」「音楽だってもちろん聞きたい!」と、あれもこれも欲しいのだが、機能が盛りだくさんな「オシャレ」な携帯電話はやはり2万円以上はする。そこで2万円の携帯を分割12回払い、またはそれ以上に分割して購入するのだ。
皆、どうしてそこまで熱が入るのか。先述した「携帯電話はアクセサリー」という目的が一つ。もう一つ、携帯電話は財産でもあるのだ。
「財産」とまで言わなくても、インドネシアでは中古の携帯電話が高値で取引される。カメラ付きモデルなら、1年後でも50%くらいの値段で売ることができるのである。このためか、携帯電話を大事に使う人が多い。皆シリコンケースなどに入れ、買った時の箱まできれいにとっておく。携帯電話専門誌には、新機種の宣伝だけでなく、中古の携帯電話の価格が紹介されている。人々は専門誌で新機種をチェックし、同時に今自分が使っている携帯がいくらで売れるのか、おおよそをつかんで購入計画を立てるのである。壊れたものでもパーツとしてまた市場に戻るそうだ。

 

番号だってとっても大事!

ジャカルタには携帯電話専門のショッピングセンターがいくつかある。一番大きなところは5階建て。1階から5階まで3×5メートルくらいの店が何百と軒を連ねている。一度、携帯電話のスピーカーが壊れたために、このショッピングセンターに駆け込んだことがある。そこで「スピーカーはオリジナルを使うか?それとも中古を使うか?」と聞かれてびっくり。部品だけ変えることに不安を覚え、その場でスピーカーの壊れた携帯を売り、新しい携帯を購入した。私の携帯はきっとスピーカーを変更して中古携帯売り場に並んでいるか、パーツとなっていろいろな人の携帯電話の中で生きていることだろう。

モールの中にある「電話番号屋」

モールの中にある「電話番号屋」。店員の後ろにずらーっと書かれているのが番号。お客はその中から好きな番号を選ぶ。店の外の紙に張り出されているのは今、仕入れたばかりの番号か?

ジャカルタ人の携帯愛は携帯そのものだけでなく、携帯番号にもこだわりを出す。携帯電話専門のショッピングセンターに行くと、壁中に数字が貼られた地域がある。そしてその貼り紙の前にはたくさんの客が群がり、食い入るように番号を見ている。彼らは「良い番号」を選んでいるのだ。日本でも商売をしていて、電話の番号にこだわる人というのがいるが、ここでは一般の人々。逆に、商売をしていて番号にこだわるなどということはない。私の番号はいわゆる良い番号なので、本当にしばしば「あなたの番号、素敵」と褒められる。別に狙ったわけでもないのだが…。普通の番号は300円ほどなのに、高いものでは数万円もする。それでも購入する人がいるというから、彼らは本気だ。
インドネシアの人たちにとって、一番大切なのは神様。その次にランクされるのはきっと家族。お金や地位は、あったら良い、程度のようだ。ジャカルタのあるジャワ島の人口のほとんどを占めるのがジャワ人だが、ジャワ人は古くから鳥を飼う事を好む。これは鳥を飼えるくらいゆとりを持った生活をしなさいという先人の教えを守るものだとか。携帯電話にまつわる熱狂も、日本人から見ると、何となくのんびりと感じられるのは、彼らの文化の底にそうしたのんびりとした時間が流れているからなのかもしれない。

特派員プロフィール

斉藤陽子(さいとう・ようこ)
学生時代、興味の向かう先はヨーロッパだったのが、卒業後活気が満ち溢れるインドネシアにめぐり合い、アジアに魅せられた。ホームシックを感じる間もなく、世話好きで人懐っこいインドネシア人に支えられて暮らす日々。少しでもインドネシアの事を多くの方に伝えたいと、各種情報を各メディアに発信中。

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