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世界IT事情 ITを通じて世界の文化を見てみよう! 第20回 ネパール、カトマンズ発
「ご飯作りにはかまどが現役、若者の恋愛には携帯が頼もしい味方に!」
テレビは白黒、でも世界中の家族に携帯でアクセス

北は中国、南はインドという2つの大国に挟まれた小さな国、ネパール。ネパールという国がどこにあるかは知らなくても、白銀に輝くあの「エベレスト」ならもちろん知ってる!という日本人は少なくないかと思う。雄大なヒマラヤ山脈の姿を求めて、またラフティングやサファリツアーなどのアトラクションを楽しみに、ネパールは世界中から観光客が訪れる観光立国。そんな背景もあって、しばらく前までは電気もなかったトレッキングルートの村々からもメールが送れるようになり、町のインターネット屋では各国の言語でネットを楽しむことが出来る。ツーリストとは対称的に、自分の国はおろか、生まれた町や村から一歩も出たことがない、というネパールの人々の元にも近年はITの波が押し寄せ、文字は読めないけれど、携帯電話は持っている、なんてこともしばしば。

オールドバザールの通り

旧王宮広場に続く、オールドバザールの通り。古い町並みを通る祭りの行列は、にわかにタイムトリップを感じさせる。近年の建設ラッシュで、昔ながらの建物も年々少なくなってきている。

15歳以上の識字率が50%弱というネパールでは、年配の人、また女性の方が識字率が低く、特に地方女性の現状は、50代を超えるとほぼ読み書きができない。
夫の実家は、首都カトマンズからたったの28kmの村にあるが、電話も通じておらず、直通バスもないという不便さ。バスに揺られて小一時間、それからまだ歩いていかなくてはならない。運動不足の身にはきついが、うちなどはまだ近いほうで、こんなに小さな国なのに、実家はバスで20時間、歩いて2日なんていうところもザラ。料理は昔ながらの薪でかまど炊き。電気は通っているが、電化製品は白黒テレビのみという生活ながらも、携帯電話だけは普及の一途。私の義母も、かける時は誰かにお願いして、受けるのは「ココ(受信ボタン)押せばいいんだね!」ということで、外国や都市に出ている子供たちや孫たちと電話で話をするのを楽しみにしている様子。
村に一軒だけあった電話屋も、マオイストの騒乱で壊されてしまい、使い物にならず。以前、電話屋では「○○さんに○時に電話がかかるから、来るように伝えて」と、通りがかりの人に言付けると、まるで伝言ゲームのように本人にメッセージが伝わって、急いで電話屋に出かける、なんてことが日常だった。ところが電話が復旧するよりも早く携帯電話が広がって、電話屋まで1時間もかけて出かける必要もなし、離れて暮らす家族からの電話を心待ちに、農作業に出るにもヤギを追うにも携帯電話片手に、なんて光景も見られるようになった。まさに「一家に一台」の携帯電話。

 

ツールだけじゃない、マナーもグローバル化

カトマンズなどの都市部ではといえば、以前は、乗り合いバスの中で他人同士がすぐに井戸端会議を始めていたのだが、この頃では無言で携帯電話を覗き込む姿が目に付くようになったのは、ちょっと寂しい光景だ。

親類縁者と情報交換

数字が読めないから、電話をかけるのをお願いすることもあるけれど、携帯電話があれば、世界中に散らばった親類縁者と情報交換。

現在ではまだ携帯電話でインターネットを楽しむことは出来ないが、いずれ出来るようになったら、ますます隣に座った人と会話を交わす人は減ってくるだろう。カトマンズでは識字率もかなり上がってきていて、学校ではパソコンの授業も導入され、パソコン塾も大盛況、インターネットショップも町のあちこちにある。学生の間では携帯電話を持つのがステータスで、アルバイトをするでもない彼らには到底買えそうもない機種を、自慢げに持ち歩いている若者もよく見かける。

一昔前までは、恋人が並んで町を歩くのもご法度だったくらい、恋愛が大っぴらに出来なかったネパール。手をつないで歩くなんてとんでもない。今でも結婚はお見合いがほとんどで、結婚というゴールに至るまでの付き合いをするカップルは10%にも満たないだろう。そんな環境で恋する二人の強い味方が携帯電話。家族の誰にも知られずにこっそり恋人とメッセージのやり取りをしたり、ミスコール(呼び出し音を数回鳴らして切って「かけなおして」とか、呼び出し音の回数をメッセージとして「おやすみ」「愛してる」といった風に使われている)で連絡を取り合ったり。おかげで恋愛に対して閉鎖的だった風潮も、少しずつではあるがオープンになってきた。30分でも1時間でも平気で時間に遅れるルーズなネパール人も、デートの約束なら待ち合わせの時間にピッタリ到着。水に濡れるとすぐに壊れてしまう腕時計を使うよりも、携帯電話を持ち歩くほうがファッショナブルだし時間も分かる。見せかけだけでなく、マナーの面でも少しずつグローバル化の波に乗って来たネパールである。

特派員プロフィール

秡川圭代(はらいかわ・かよ)
二十歳で日本を出、世界を回るつもりが気がついたらカトマンズに根をはって早9年。オールドバザールを中心とした路上観察を趣味とする、2歳と0歳の子供を持つワーキングマザー。その日常と街の風景をブログ『うわのそら〜ネパールはカトマンズ』にて発信中!

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