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世界IT事情 ITを通じて世界の文化を見てみよう! 第24回 アメリカ、ロサンゼルス発
「地元企業のことは、地元の一般市民が一番知っている」
地元企業などの評価は地元「Yelper」におまかせ

「ニューヨークから引っ越してきたばかりで、腕の良い歯科医がどこにいるのかわからない」「クライアントが訪ねてくる。最高のエンターテインメントで満足してもらえる接待がしたい」。
必要な情報が瞬時に得られるようになったネット時代とはいえ、本当に評判が良い店舗や、何度も通う地元の人たちの意見や感想など、広告ではなく生の声で語られる評価まで検索するのは難しい。

Yelpウェブを見るユーザ

TIME誌で、2008年の「重要サイトベスト10」に選出されたYelp。利用者の数もうなぎ登りで、各地にビジネスを展開している。

そんな検索を可能にしたのが、2004年に開設されたシティガイドサイト「Yelp(イェルプ)」だ。本拠地であるサンフランシスコを筆頭に、ロサンゼルスやニューヨークなど24の主要都市別にサイトをオープン。海外進出も果たし、カナダやイギリスでも人気を集めている。
ここロサンゼルスでは、レストラン3751軒、ショッピング2047軒、ベーカリーやワインショップなど飲食関連ショップ1504軒、スパなど美容関係676軒、クラブなどナイトライフ644軒、病院関係526軒などが掲載されている。
ウェブ検索サイトのGoogleで検索することを「ググってみる」と動詞化するように(英語にも同様の表現がある)、店などの評価をすることを「イェルプする」と動詞として使われるほどの浸透ぶり。2009年2月現在の調査によると、この一ヵ月を見ても、Yelper、つまりYelpの利用者は、2000万人に上る人気だ。
「ここのピザはイマイチだったから、頼まないほうが無難よ。だけど、ガーリックシュリンプ入りシーザーサラダは格別だったわ」「54階から眺めるロサンゼルスの景色が最高だから、記念日にはいつもここを使うんだ」。
これまでにYelperたちから集まった評価は、500万以上。各店舗について、約10項目が評価される。
「あそこのカスタマーサービスは最高だから、キャメロン・ディアスも来てたわ」。「それはすごい情報を聞いた!」。こんな風に、他のYelperが自分の評価に対してコメントしたり、自分のプロフィールを作成してYelper同士でウェブ上のやりとりができることも、Yelpが人気を集める理由の一つ。Yelpはソーシャルネットワークの側面も強く、アクティブなコミュニティによって、ネットワーク作りにも一役買っている。
Yelpを積極的に使い、上手な評価コメントを書いたり、評価を証拠づけるために写真を提供したり、リストを作ったり。そんな優秀なYelperには、プロフィールに「Yelp Elite(エリート)」のバッジがつけられ、エリート限定イベントに招待されるなど、優れた評価者に対するサービスにも余念がない。

 

スポンサーの悪評でも消去せずに掲載

電話番号案内の延長線上にあるYelpの主要目的は、地元住民と地域企業をつなぐこと。しかし、企業が批判されたり、同じ消費者からの連続投稿など、消費者側の一方的で偏った見解になる恐れも免れない。
そこで、2008年11月に、経営者側からも自社の事業内容について紹介できるよう「About This Business(この企業について)」というセクションが設定された。

Yelpの「K9Loft」ウェブ

三ツ星半のランキングがついたペットのデイケア施設「K9Loft」。指導員のもとで他の犬と一緒に時間を過ごし、社交性を身につける。指導員はすべて米寄宿委託飼育協会の認可済み。

ここには、店舗などの成り立ちや写真、特徴などが記載される。評価者同様、利用は無料。このため、独自のウェブサイトを持たず、情報を発信するチャンスがなかった小規模企業にとって、大きな恩恵を受ける結果となった。
また、Yelpのスポンサーに対して、Yelperからの評価が悪くても、それを消去せずに掲載するところも好感がもてる。
「サイト上に店舗などの広告欄を設けはしましたが、スポンサーだからといって不利になる評価を削除したりはしません。スポンサーに喜ばれる情報しか掲載しないようになったら、Yelpの評価に対する信頼が低くなります。もちろんスポンサーはその点を理解して、契約してくれているんです」。このように話すのは、広報担当部長のステファニー・イチノセさん。
これは、ネガティブな批評を逆手に取り、ここから良いものを生み出すという理念に則ってのことだ。企業側も批判を今後の改善につなげるなど、反応はいたって前向きだ。
「経営者が、評価した人にコンタクトを取れる仕組みが良いですね。あるお店ですごく不愉快な思いをしたことがあり、Yelpにコメントしました。すると、経営者から謝罪のコメントが返ってきました。また、経営者から連絡をもらって、僕の誤解だったと判明したこともありました」と話すのは、Yelperのマイク・Tさん。
イチノセさんによれば、今後は携帯電話にもサービスを広げていくとのこと。企業と消費者の架け橋になっているYelp。今後の展開が楽しみだ。

特派員プロフィール

大山真理(おおやま・まり)
ロサンゼルス在住。東京FM、FM802などでラジオレポートを行う。『夕刊フジ』、『朝日新聞(ウェブ)』、『日経トレンディ』、『日経ヘルス』など各種媒体に健康、流行、旅行、インタビュー記事などを執筆。『30都市徹底ガイド(ロサンゼルス担当)』(JTBパブリッシング刊)、訳書に 『「もう頭にきた」と思ったときに読む本』など。テレビ番組の取材コーディネート、通訳にも携わる。

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