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![]() ![]() 「日本に行った時、ネットカフェを探すのに苦労した」とは来日したアルゼンチン人の台詞。言われてみれば、日本ではインターネットの世帯普及率が高いせいか、アルゼンチンほどネットカフェを見かけない。
中南米諸国の中でも教育水準が高いことで知られる(識字率96%)アルゼンチンでは、コンピュータやインターネットの浸透度はかなり高い。が、高価なパソコンを自宅に持っている人の割合は先進国に比べると少ない。 その需要を満たすべく、街の至るところに見られるのが「ロクトリオ(Locutorio)」。ロクトリオとは、元々はキオスク併設の公衆電話ブースが並んだ電話屋のことだが、最近では数台、多いところでは数十台のパソコンを置いてネットカフェの機能も果たしている。夜遅くまで営業していて便利な上、利用料金は1時間約3ペソ(約100円)。接続速度も快適だ。ただ、この国の住人になると、家でもオフィスでも1ヶ月に1,2回は接続が不安定な日があったり、プロバイダが不当な値上げを急激に行ったり、といった南米らしいといえば南米らしい理不尽な問題点は、ここでも抱えてはいるが…。 さてロクトリオの数の多さとともに、そこで見かける利用者の年齢層にも目を見張る。特にブエノスアイレスではお歳を召した方のネット利用率が非常に高い。“ビエホス・ポルテーニョス”(シルバー世代のブエノスアイレス人)のアクティブさは、ダンスや演劇などのクラスへの参加を始めとして、街中での彼らの様子にも見て取れるが、お年寄りがお年寄りらしくないというか、学習熱が高く好奇心旺盛なポルテーニョ(ブエノスアイレス人)の特徴は、年齢を超えても消えたりしない。それはシルバー世代のネット利用にも顕著に表れている。
![]() 彼らのネット利用の目的はとても「実用的」。私が借りているオフィスの管理人をしているペドロは70歳を超えているが、自分で作ったチーズをネット販売していることを知って驚いた。郊外に所有する土地でヤギを飼い、その乳でチーズ作りをしている、いかにも「アナログ」なおじいさんだと思っていたのに。ECサイトを開設し、メールで注文を確認するに過ぎないが、それでも大したものである。
そのチーズの美味しさは、確かに以前から近所でも評判になっていて、私もおこぼれにあずかったことがある。フランスパンに彼のチーズをのせて少しオリーブオイルをたらした逸品は、今でも忘れられない。このチーズが、ネットを通じて多くの人の舌を楽しませることになるのなら、皆にとって幸せなことだ。 アルゼンチンでは、個人でパソコンを所得する状況にはまだまだないが、今を最大限に生きようとする姿勢には、自分が主役という意識がある。年齢による限界を自分で決めず、いくつになっても人間が持てる可能性を広げるビエホス・ポルテーニョスと触れ合う毎に、歳を重なるのが楽しみになるのだ。
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