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世界IT事情 ITを通じて世界の文化を見てみよう! 第31回 ブラジル、リオデジャネイロ発
「2016年夏季オリンピック開催都市」
現代社会から離れ森と共に生きるインディジェナ

近年森林伐採が深刻なアマゾン熱帯雨林は、世界最大の河川、アマゾン川流域に広がる。地球上最も多種の生物が生息しており、またその二酸化炭素吸収量から「地球の肺」とも呼ばれている地域だ。そして現在もなお、数多くの先住民であるインディジェナ(インディオという言葉は差別的だとされ、ブラジルではインディジェナと呼ばれる)の部族が、アマゾンの森と共に暮らしている。

Dominique Aguiar

インターネットに向かうインディジェナ。彼らは日常的にこうした「化粧」を施している。

ブラジルには現在、215部族、人口の0.2%にあたる約35万人のインディジェナがいるとされ、その約30%がアマゾン州に集中している。植民地時代の虐殺や奴隷化を経て、現在は森林伐採などで多くの部族が住む場所を追われている。2009年時点でブラジル政府により設けられたインディジェナ保護区は、合計1億500万ヘクタール。ブラジル国土の12.41%に当たる。

現代社会と全く接触のない部族も多いが、テレビ取材のスタッフを通じて「ズボン」というものの存在を知り、イベントなどで都市を訪れて見た自動車や地下鉄の話を仲間に伝える。接触が増えるに従い、融合が進んでいく現状は更に進むだろう。

そして今、彼らの住む森が、凄まじいスピードで失われている。2008年から09年に破壊されたアマゾン森林は、過去20年間で最低レベルだったが、それでも一年間に8,500〜9,000平方キロの森林が破壊された。東京都の面積、2,187平方キロと比べるとその規模は計り知れない。

 

飛行機か川を下るか、それともメールで伝えるか

そうした状況を憂えたNGO組織、「森林の民ネットワーク(Rede Povos da Floresta)」が、インディジェナとブラジル政府、世界の環境団体とのコミュニケーションの道具として、インターネットの通信網の整備を進め始めたのは2003年のことだ。政府の電子システム支援プログラム(略称GESAC)が提供する衛星を利用して、アマゾン内のインディジェナ拠点を探り、地理的に孤立しているが、外部と接触がある地域への設置を図っている。

NPOなどとの交流によって、植林活動をするアマゾンのインディジェナ。

森林の民ネットワークのコーディネーター、ビジニ−ア・ガンドレス氏によれば、インディジェナの中でインターネットを使用する人々は、基本的に2つの言語を操る。自身の部族の言葉と、ブラジルの公用語であるポルトガル語だ。そのためコンピュータを使用するために、新たな言語を学ぶ必要はない。しかしほとんどのインディジェナはコンピュータに触れたことがないため、講座を開設して使い方を教えたりしている。講座ではインターネットの使用方法、動画サイトへの投稿の仕方、デザインなどについても学ぶ。

その結果、例えばタホ川付近に暮らすKontanawa族の133人、Jurua川付近に暮らすAshaninka部族の460人など、現在合計9箇所でインターネットへのアクセスが可能になった。飛行機か川を下るしか交通手段がないような場所にインターネットの通信網が設置されたことで、メールの使用、インターネットの検索などを通して、政府、国際団体とのコミュニケーションが可能となったのだ。また部族同士の交流、そして伝統や生活について、インディジェナ自らが情報を発信するようになった。

彼らが主導して行っている森を守る活動は興味深い。森で生まれ、森と共に生きるインディジェナにとって、森林破壊は死活問題だ。保護区と言えども侵入者は絶えないのだが、人里離れた地域に住む彼らは、インターネットの導入によってそうした侵入を政府に迅速に通告する手段を得たのだ。彼らは日常、自分達の土地の見回りを行う。銃を持った侵入者が森林伐採を行っているのを発見したら、これまでのように弓矢で闘いを挑む必要はなく、メールで政府に連絡をとる。この結果、これまでに何度も国軍が派遣され、伐採を防ぐことができたという。

森林の民ネットワークのこのプロジェクトでは、今後、更に30のインターネット拠点の設置を予定しているという。インターネットという手段を通した、森の民による森を守る活動の更なる発展に期待したい。

特派員プロフィール

高橋直子(たかはしなおこ)
ブラジル、リオデジャネイロ在住。ライター、カメラマンとして『Precious』、『日経キッズプラス』、『AERA with kids』、『Discover JAPAN』、『ソトコト』などの雑誌にインタビューなどブラジル情報を発信。ブラジルで思ったこと感じたこと知ったことを綴る「ブラジルをあそぶブログ」更新中。

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