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第38回 アメリカ、ワシントンDC発

「選挙とインターネット」

草の根運動を支えるツール
共和党ブラウン上院議員のホームページ

共和党ブラウン上院議員のホームページ。上半分は、YouTube、下半分はTwitter、Facebookなどが占めていて、当選後もソーシャルメディアを重視。

アメリカでは、選挙と言えばインターネットは欠かせない。特に「YouTube」「Facebook」「Twitter」また各種ブログなどのソーシャルメディアが重視されている。大きな節目となったのが、2008年の大統領選挙だ。当時、候補者だったオバマ大統領は、Eメールやウェブサイトという一方的な情報発信にとどまらず、ソーシャルメディアを駆使。双方向に情報を交換できるようになり、幅広い支持の獲得に成功した。このため、オバマ大統領は「ソーシャルメディア大統領」とも呼ばれる。

だが、これは、注目の候補に限ったことではない。去年から今年にかけて、この「ソーシャルメディア」は、草の根運動を支えるツールとして広がってきている。オバマ政権の経済政策に反対する活動家が始めた「ティーパーティー」は、TVで紹介された後インターネット上で広がりを見せ、次第に全米規模に拡大。去年の秋には、数万人規模のデモ行進に発展した。また、今年1月、民主党の牙城だったマサチューセッツ州で行われた上院議員補欠選挙では、この「ティーパーティー」が無名の共和党ブラウン候補を支援。結果として、見事、奇跡の勝利となったことで、秋の選挙への影響が注目されている。

更に「ティーパーティー」に対抗して「コーヒーパーティー」も出現。「怒り」を示すだけでなく「党派を超えた解決策を見出していこう」と、女性の映画監督がFacebookで呼びかけたところ、数日で、何千という賛同者が集まった。半年も経たないうちに、彼女のFacebookには「ティーパーティー」と同じ21万人ものファンが集まり、集会も初回は全米で400箇所、2回目は500箇所と、規模が拡大してきている。

「草の根」として、今まで陽の目を浴びなかった小さな声が、ソーシャルメディアを通じて、一挙に大きな動きにつながっていく道筋ができてきているのである。

夫の出馬で垣間見たオンライン献金システム
選挙事務所前に立てられたバナー

夫の選挙事務所前に立てられたバナー。ホームページのアドレスが、大きく書かれている。

今年、アメリカは中間選挙の年。これは、4年ごとにある大統領選挙の中間に行われる選挙のことで、国会の3分の1の上院議員と下院議員全員の改選が行われている。実は、私の夫(アメリカ人、民主党)も、初めて国会議員(下院)に立候補し、インターネット抜きには語れないアメリカの選挙を肌で感じている。

地盤も看板もない夫は、まず、ITに強いキャンペーンスタッフを確保。ホームページを立ち上げて、ボランティア、献金を募った。もちろん、Facebook、Twitter、YouTubeも、当然のごとく、ホームページに掲載。ただ、特にアクセスしてほしい献金については、有権者にメールを送って積極的に呼びかけた。また、TVコマーシャル以外にも、スタッフが携帯電話で撮った「パパに献金して!」という子供達の短いビデオをホームページに盛り込んだりと、あの手この手が使われていた。

アメリカでは、実際の献金方法として、クレジットカードを使ったオンライン献金が広まってきている。国内各地はもとより、海外の知人からも瞬時に入金してもらえるので「これは助かる!」と、夫もITの発達に感謝していた。しかも、オンライン献金だと、候補者の手続きも至って簡単。民主党には、「ActBlue」というオンライン献金を推進する政治団体があり、そこに候補者が登録すると(無料)、その候補者のホームページからオンライン献金されたものを整理し、毎週、献金総額の小切手を自分の選挙事務所に送ってくれるのだ。候補者はパスワードを使って、献金者の名前や額をオンラインで随時チェックすることができ、対立候補者との合計額の比較など、選挙運動の盛り上がり状況を知る手がかりともなった。ActBlueは、スタートして6年だが、その間に、4000人の候補者が登録。合計100万人余りから、およそ、123億円にも上る献金を集めている。

それだけではない。党派に関係なく使える、「BlueSwarm」という献金集めのツールも登場。支持者が献金してくれるだけでなく、献金してくれた人が、更にその個人のFacebookなどのネットワークを使って、献金集めを手伝ってくれる仕組みになっている。

さまざまなツールが次々と誕生する中で、それをどう駆使していくか、使い手のハードルも、ますます高くなってきた。オバマ政権への国民の判断が下る11月の中間選挙に向け、その熾烈な戦いは更に熱くなりそうだ。
*為替レート 1ドル=91円で換算

特派員プロフィール

笹栗実根(ささぐり・みね)
1999年、テレビ局のワシントン特派員としてアメリカへ。以後、結婚退職してフリーライターに。『asahi.com』(webサイト)、『教室の 窓』(東京書籍)、『エコマム』(日経BP)などにアメリカに関する原稿を執筆する他、FM802でラジオレポート。

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