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第39回 ドイツ、ベルリン発

「駐車料金の支払いは携帯電話で」

小銭いらずの便利さ
駐車場に掲げられた「携帯電話で支払い可能」のマーク

駐車場に掲げられた「携帯電話で支払い可能」のマーク。駐車券を利用するか、携帯電話で支払うかを選べる。

自動車王国のドイツなら、地下駐車場や立体駐車場などの設備も整っているかと言えばそうではない。店などが集まっている中心部や住宅地では、路肩に隙間なく駐車した車列が続く光景は珍しくない。

わずかな隙間に運良く駐車できたら、次は料金の支払いだ。こうした路上駐車スペースは、たいていの場合、月曜から土曜までの8時から19時までは有料である。路肩に設置された機械で駐車料金を支払うわけだが、あらかじめ駐車する時間を考慮して駐車券を購入しなければ、面倒でも再度料金を支払いに駐車した場所まで戻らなければならない。怠れば、そのうち、取締官などに駐車違反の切符を切られるだろう。万が一、予想より早く用事が済んでしまった時は駐車料金の払い損にもなる。更に日本のように両替機の役割を果たすようなジュースの自動販売機など路上には見あたらず、紙幣に対応する徴収機も設置されていないため、小銭を持っていなければ駐車をあきらめるしかない。

そんなドイツ人たちが抱える数々の不便を解消してくれるのが、新しく導入された、携帯電話で料金を支払うシステム「ハンディ・パルケン」である。

携帯電話による徴収システムは、2005年にベルリンで始まった。2008年には全国22都市で導入され、昨年末までには、北部ハンブルクや西部ケルンなどの大都市はもちろんのこと、小さな地方都市にまで拡大した。現在、このシステムを導入した都市は、54を数えるまでになり、今年もその数は着々と増え続けているという。

携帯電話で料金が支払えれば、小銭を探す手間が省け、分刻みで必要な料金を精算できる。実際、ベルリンでは1〜3分ごとの分刻みで、5セントごとの料金加算となっている。更には、駐車時間をオーバーしても携帯電話で簡単に延長できるなど、ドイツ人の大好きな「効率」と「節約」という両面を達成できる、まさに彼らの気質にぴったりと合致したシステムなのだ。

ショートメッセージ送信で完了
駐車は「駐車券か携帯電話で」と書かれた路上駐車場

駐車は「駐車券か携帯電話で」と書かれた路上駐車場。

さて、実際にどのように使用するかだが、仕組みはいたって簡単。基本的には、車を駐めた後、携帯電話で駐車場に書かれてある番号へ電話するか、ショート・メッセージ・サービス(SMS)で駐車した場所の駐車場番号を送り、駐車が終わったら再度同じように連絡するだけだ。駐車終了予定時間の10分前には、SMSで連絡が来るので、延長し忘れて駐車違反を取られるなどということもない。ちなみに駐車料金は、1ヶ月ごとに精算され、月末に管理会社から送られてくる請求書でまとめて支払うことになっている。

町によって若干、仕組みは異なり、事前にインターネットで車のナンバーや携帯番号を登録しなければ使用できなかったり、料金支払いの有無を調べる取締官向けに車のフロントガラスに「携帯電話で支払っています」というシールを貼らなければならなかったりという場合もある。このシールは、登録した後に郵便かメールで送られてくるものだ。

それでも、この小銭いらずの簡単な駐車料金支払い方法は、導入した都市で市民に幅広く受け入れられ、他都市での経過を慎重に見守っていた都市でも、その成功を目にして導入の検討を始めているという。また、ドイツだけでなく、お隣りのオーストリアやスイスにも波及している。

新しいものをあまり好まないドイツ人だが、無駄を省き、キッチリ正確な料金を支払うことのできるシステムは、彼らの心を一気につかんだと言えそうだ。

特派員プロフィール

島田ライコ(しまだ・らいこ)
フリーライター。大学卒業後、ビジネス誌、男性一般誌の編集者を経て2005年に渡独。ミュンヘン工科で農学とビール学を学ぶ。ドイツの情報を各誌に執筆。http://raiko.blog.so-net.ne.jp

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