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世界IT事情 ITを通じて世界の文化を見てみよう!第50回 オーストラリア、シドニー発

中央銀行にあたる「オーストラリア準備銀行」がある国内最大の都市。周辺部も含めたエリア人口は約457万人。首都のキャンベラ(同約36万人)は政治的中心だが、準備銀行のみならず証券取引所のあるシドニーが経済的中心と言える。文化的な中心は国内第二の都市メルボルン(同約407万人)と分け合っている。シドニー湾を囲む風光明媚な街で、シドニーオペラハウスは世界遺産に登録されている。日本からの観光客も多い。

もう一つのプラスチックマネー!?

透明な部分からは向こう側がはっきり見える。

透明な部分からは向こう側がはっきり見える。

オーストラリアには「紙幣」はない!

インターネット上での決算において大活躍のクレジットカード。「紙」でできたお札や「金属」製の硬貨との比較で、「プラスチックマネー」と呼ばれているのはご存じの通りだ。ただし今回の話題は、もう一つのプラスチックマネーだ。それはオーストラリアのお札。実は紙ではなく、プラスチックの一種であるポリマーでできているのだ。
ポリマー製のお札の利点はいくつかある。まずは偽札が作りにくい点。触った感じから、「紙」とは明らかに違う(もちろん折り曲げることはできる)。更に写真をご覧いただくとわかるが、お札の中に「透明」な部分がある。ここはカットされていて穴が空いているわけではなく、透明なポリマーが使われている。よってカラーコピーしても、この部分は再現できない。凹凸をつけるエンボス加工にしても、紙ならもともと平らのものを、後からある意味で無理矢理持ち上げる。心優しい私などは紙の悲鳴が聞こえてきていたたまれないし、元に戻りやすい。一方、プラスチック札の場合、もともと立体の「型」に流し込む原理なので、なんの乱暴狼藉も働いておらず、凹凸は半永久的に残る。
また、プラスチックは紙よりも劣化しにくい。かつて使われていた紙のお札は平均8ヵ月ほど流通させるとボロボロにくたびれて裁断処分に回したとのことだが、1988年から流通し始めたプラスチック札は30ヵ月、つまり4倍ほど長持ちする。4倍持つということは、作る頻度は4分の1で済むということ。コスト的にもプラス面は大きい。
当然のことながら強度も高く、両方からひっぱってちぎろうとしても、ビクともしない(ただし、ハサミやカッターには紙同様弱い)。「このお札、ひっぱって十秒以内に破れたら千円あげるけど、ダメだったら千円もらうよ」などというゲームをすると、飲み会やコンパでウケて、ついでに飲み代もチャラになるかもしれない。オーストラリアにいらっしゃった際は、ぜひ一枚お持ち帰りになることをお勧めしたい。と同時に持ち帰るのは一枚で、残りは私に寄付することもお勧めする。

引きちぎろうと思っても無理!

引きちぎろうと思っても無理!

ユーザーが最も評価している点は……

さて、以上が造幣局の「公式見解」だが、使う側は別の理由で評価している人が多いようだ。
「何が便利って、水にびしょびしょにぬれてもだいじょうぶなところだよ」
「そうそう。ボードショーツのポケットに入れて、プールや海に入ったり、サーフィンしたりもできるからね」。夏の普段着はボードショーツとビーチサンダルというウォータースポーツ好きのオーストラリアならではの発明品なのではないだろうか。
ちなみに、これらの利点が認められて、オーストラリア造幣局では今まで世界18ヵ国から依頼を受けて、お札を製造している(もちろん各国政府から正式な依頼を受けてなのでご安心を)。その輸出先第1号は1990年のシンガポール(記念札)だが、西サモア(91年。外国で初の通常のお札)、パプアニューギニア、クウェート、インドネシア、ブルネイ、タイ、スリランカ、マレーシア、ニュージーランド、バングラデシュ、ソロモン諸島、メキシコ、ベトナム、チリと続く。海とか水遊びに関連が深い国々ばかり並んでいるように見えるのは、やっぱり世界中の人々も考えることは同じだからだろうか。
褒めてばかりだとオーストラリアの造幣局から現ナマならぬ現プラを受け取っていると疑われそうなので、問題点を挙げておく。一つは火に弱い点(紙でも燃えるが)。折り曲げられるが折りたたむことはできないので、かさばる点(紙でもたくさんあればかさばります)。色が派手で子どものオモチャに見える点(それは色眼鏡!)。あと、どうも私のことを毛嫌いしているように思うのだが……それは日本の紙幣でも変わらないか。

特派員プロフィール

柳沢 有紀夫(やなぎさわ・ゆきお)
ブリスベン在住12年。『世界ニホン誤博覧会』『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか』『日本語でどづぞ』『オーストラリアで暮らしてみたら。』『極楽オーストラリアの暮らし方』など著書多数。海外書き人クラブの発起人兼お世話係。

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