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世界IT事情 ITを通じて世界の文化を見てみよう!第55回 オランダ、アムステルダム発

オランダの首都。世界遺産に認定された、17世紀の運河地区を有する。この扇形に広がった運河の中心に位置するのが、アムステルダム中央駅で、どことなく東京駅に似ているからか、親近感を持つ日本人も多いとか。市内の中心地は道幅が非常に狭く、入り組んでいるため、便利な交通手段として自転車が欠かせない。市内通勤者の約40%は自転車を利用し、これがまたエコ的とアムステルダムっ子たちはよく自慢の種にする。

観光都市「アムステルダム」の華麗な変身

I  am  sterdam

「アムステルダムは私」「私はアムステルダムっ子」の意味を含むスローガン。キャッチーなデザインとともに市民に浸透しつつある。

アムステルダム人として

アムステルダム市はいろいろな俗称を持つ。「オランダの顔」や「世界都市」などさまざまだが、2010年度から、さらに「インテリジェント・シティ」なる新たな呼び名が加わった。これは簡単にいえば、限りある資源の再利用を積極的に行う市、つまり「エコな理想的都市」を標榜してのことだ。その理想都市を実現するために、さまざまなプロジェクトが企画され、遂行されてきた。
プロジェクトの主眼のひとつには、市のクオリティ(質)をより向上させて、単なる観光市ではなく、斬新な改革を行う都市として生まれ変わりつつあることを世界中にアピールしようというものがある。この改革にあたっては、市や近郊の自治体が中心になって「アムステルダム・スマートシティ・プログラム」が作られた。例えば、CO 2排出量を1990年代と比較して40%削減することや、エネルギーの無駄遣いを控えるよう市民に訴えることなどが盛り込まれている。市を挙げての改革に、協賛した一般企業はもちろんのこと、市民ひとり一人も「I am sterdam(私はアムステルダム人)」というスローガンを掲げ、一丸となっている。では、具体的に何をしようというのかというと…。

電気自動車に充電する人

電気自動車に充電する様子。街の各所にこうしてステーションが設けられている。

インテリジェント・シティの片鱗が至るところに

例えば、観光に欠かせないタクシーの存在に注目。現在、市内を走るタクシーの半数には電気自動車が使用されている。騒音が少ない上、乗り心地もなかなかだと、観光客の評判もかなり良いらしい。また市内には運河が多く、遊覧船は観光の目玉の一つで電気式に変更されたものの、バッテリー充電のコストが高く、環境省でも常に課題となっていた。ところが昨年から、電気自動車と充電ポイントを共有することによって、費用が半分で済むようになったそうだ。
また、観光客なら一度は訪れる「ユトレヒト通り」は、最近「エコ・ストリート」という通称で呼ばれるようになった。ここに軒を連ねる各店舗は、暖房の約30%までをソーラーパネル使用による太陽熱でまかなっているという。店内で不要になったプラスティックや紙などの廃棄物はすべてリサイクルに回し、包装や宣伝に使用する材料にもリサイクル商品を使用する徹底ぶりだ。
さらに市には「エコ・ガールズ」と称した女性らのチームがあり、デパートなど店内の温度を調査し、無駄にエアコンを使用していないか、無意味にドアを開けっ放しにしていないかをチェックする監視役としても活躍している。
もし今後、アムステルダムに立ち寄ることがあれば、この市を「エコ」の視点でゆっくりと眺めていただきたい。インテリジェント・シティの「エコ精神」が、あちこちに見られること請け合い。アムステルダムの新しい一面が見えてくるだろう。

特派員プロフィール

カオル フリードリヒス(かおる ふりーどりひす)
ネット利用者数が欧州で最も多いとされるオランダに住み、もはや四捨五入して20年。日々の買い物もネットで済ませられる気軽さに便乗しながら、この国ならではのネタ探しに明け暮れるライター。

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