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世界IT事情 ITを通じて世界の文化を見てみよう!第58回 オーストラリア、ブリスベン発

広大なオーストラリア。都市部には電車もあるが、ちょっと郊外に出れば移動手段は自家用車か長距離バスに限られる。トレーラーを一、二台牽引した巨大トラックとすれ違ったり(時速は双方ともに100km!)追い越したり(長いので時間がかかる!)、と思ったら道路に飛び出してくるカンガルーなど、スリル満点!また「次のガソリンスタンドは100km先」などということもよくあるので、ガス欠というスリルも(助けを求めようにも、ほとんど車が通らないという場所も&helip;)。

ユーモアでコミュニケーション。オーストラリアの交通標語

画像 州政府のピックアップトラック

州政府のピックアップトラック(オーストラリアでは「ユート」と呼ばれる)。写真では小さくて見えないが、”Every k over is a killer.”(「スピードオーバー1kmごとに人殺しの可能性が増える」という意味)ともある。「キロオーバー」と「キラー」は韻を踏んでいるが、ちょっと過激すぎ?

「直接的」と「オブラート」以外の第三の伝達方法

「喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つになります(以下略)」。日本のタバコのパッケージにそうした文言が書かれていることはご存じだろうか。実は8つのパターンがあって、そのうちの2つを載せなければならないらしい。2005年の途中までは「あなたの健康を損ねる可能性がありますので吸い過ぎに注意しましょう」で、1989年までは「健康のため吸い過ぎに注意しましょう」だったそうだ。警告の度合いは多少増している。だが、より過激なフレーズや写真を載せて脅しをかけている諸外国に比べると、まだまだ生ぬるいという声もよく聞かれる。
誰かに何かを伝達するとき「直接的で強烈」なのがいいのか、はたまた「やさしくオブラートに包んで」がいいのか。子育てから会社での部下の指導まで、これは本当に難しい問題だ。あまりきつく叱っても反発されるだけだし、ゆるくては伝わらないし。人はコミュニケーションのさじ加減に悩むものだ。
さて、私が住むオーストラリアでは、交通標語もけっこう刺激的なものが多い。だが単に「ストレートで強烈」なパターンとも言えない。そこはかとないユーモアが含まれているからだ。
具体例を見てみよう。州政府の公用車(自動車やピックアップトラック)に貼られているのは“ High speed. Low IQ.”。直訳すると「高速、低知能指数」。つまり、「高速でスピード違反して暴走運転するようなヤツは、おバカさん」という意味だ。「そこまで言うか」という気もするが、「高」と「低」の対語のおもしろさと、単純明快に言い切った痛快さに、思わずクスッとしてしまう。

画像 看板

“R.I.P”は“ Rest in Peace”の略。イラストは墓石だと思われる。

「ユーモア」を交えて反発されることなく的確に

次は荒野を走るハイウエー。「ハイウエー」といっても日本の高速道路のように壁や中央分離帯があるところはあまりない。大地の上をアスファルトで固めただけの対面交通がほとんど。ということは、ちょっとした不注意が「時速100km同士で正面衝突」などという大惨事につながることになる。
かくして道端にある看板にはこんなフレーズが。”Rest or Rest in Peace”。ちょっとわかりにくいかもしれないが、”Rest in Peace”とは「安らかに眠れ」という意味で、墓碑などに刻まれる。つまり先ほどのフレーズは「休憩しろ。さもなくば安らかに眠れ」という意味。「休まないと死ぬぞ」ということだが、ここでは”Rest”という単語が効果的に重複していて、これも思わず微笑んでしまう。これらの標語、個人的には「座布団一枚!」と叫びたいところだ。
そう言えば、日本でも最近マナーキャンペーンなどで、ユーモア広告が増えてきたが、どちらかと言えば微笑ましい「ほっこり系」。一方、オーストラリアは「ブラックジョーク系」。爆笑かもしれないが、一歩間違えれば抗議殺到間違いなし! 郊外に出ればハイウエーにもガードレールも中央分離帯もないオーストラリアでは、ユーモアも危険と隣り合わせと言うことか?

特派員プロフィール

柳沢有紀夫(やなぎさわ・ゆきお)
1999年よりオーストラリア在住。『日本語でどづぞ』『抱腹絶倒! 困った地球人』 (中経の文庫)、『世界ニホン誤博覧会』『ニッポン人はホントに「世界の嫌われ者」なのか』(新潮文庫)など著書多数。

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