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世界IT事情 ITを通じて世界の文化を見てみよう!第60回 インド、デリー発

2012年は日印外交樹立60周年記念にあたる。そのため、日本関係のイベントがインド国内で目白押しだ。参加して驚くのは、若い人達の日本に対する大いなる関心。ワークショップでは、折り紙に始まり、木目込み人形を器用に制作している。平均年齢が25歳未満。大いなるエネルギーを日々感じるインド、デリー。

ここが変だよ?インドの携帯ライフ

画像 オペラ

デリーにも立派なホールがあり、コンサートなども催されるのだが…

インドで楽しめるクラシックコンサート

ヨーロッパに比べると、インドではクラシックのコンサートが開催されることが少ない。だから先日、大使館主催のコンサートに招かれた時、生のクラシック音楽に飢えていた私は「嬉しい」を通り越して「生きていて良かった」と感激した。しかも大使館主催ともなれば、基本的に無料だ。さっそく30年来、デリーに住むオーストリア人の親友、ユッタに声をかけてオペラのコンサートに出向いた。
ホールは、とても立派で、千人は軽く入りそうなモダンなものだった。オーケストラピットもあり、かなり本格的ではないか! 歌手はほとんどがインド人。オーケストラはボンベイチェンバーオーケストラとフランス、ルーエンオペラハウスオーケストラの共演だ。さすがにフランスの管楽器の音色は冴えていて光っている。
しばし二人で久々のモーツァルトに酔いしれていたら、後方からこの場には何ともふさわしくない、ボリウッド映画音楽が大音量で甘美なモーツァルトに割って入ってきた。驚いて振り向くと携帯電話の着信音ではないか? 独特のメロディは、携帯のスピーカーからということも手伝ってか、まるで猫がヨーデルを歌っているよう。その場で静かに聴いていた客にはとにかく迷惑な話だった。これがもし日本なら、あわてて電話を切るとか、外に出るとかしそうなものだが、驚くことに電話の主は大きな声で応答したのだった。しかも悪びれる様子もなく。電波が悪い国なので、どうしても大声で話す習慣がついているのだ。
それを機にあっちからもこっちからも携帯が鳴り出した! 多分電話をしやすい時間帯にぶつかっていたのだと思う。私の席の右手には出口に続く階段があり、ホールの従業員が座って監視していたのだが、その人にも携帯電話がかかってきて元気よく応答を始めたのには、もう笑うしかない。
前方に大使館員らしき人がいて、注意しに行ったが効果はなかった。
皆さん実に天真爛漫に応答をしていて「悪いけど、もっと大きな声で話してくれないかな?音楽がうるさくて君の声がさっぱり聴こえないんだよ」と話している男性に、私は衝撃のあまりにぶっ飛びそうになった。騒動が収まったのは、休憩をはさんだ後半。大使館の職員からマナーモードを強調されたので、前半のような事態にはならなかった。

画像 病院

撮影した日は、これでもずいぶん「マシ」。いつも、周囲は全員が、大声で電話で話しているといった光景が珍しくない。

衝撃的な携帯電話事情

昨年インドで販売された携帯電話は合計1億6,600万台で、そのうち1千万台がスマホだった。携帯電話は多くの人が持っているのだが、マナーモードに設定する習慣がない。重要な会議でも例の猫のヨーデルのような着信音とともに着メロがなる。部長クラスの人がこれまた悪びれることなく、頬がひきつる日本人とは対照的に会議中でも中座して、平気で話をする。
病院の待合廊下でも大きな声での通話は日常茶飯事のこと。一応、壁に「携帯は禁止」という張り紙があるにはあるが、看護師を始め、医師も、まったく意に介さず、今夜の食事の席を予約していたりする。それはそういうお国柄、仕方がないのだ。
音楽会も会議もすっかり台無しだが、そう考えるのは我々外国人だけ。彼らにはなぜ私が眉毛を吊り上げて怒っているのか想像もつかない。インドの人にとっては家族に友人が宝なのだから。
インドの人は、本当に天真爛漫。最近は「憎めないよな、インド人諸君!」と思うようになってきた。そう割りきらないと、こちらのストレス度が上昇するのみだろう。美容と健康に最も悪いではないか。規則をちゃんと日本のように守り始めるにはかなり時間が必要だろう。
あっ、それより先に規則を作ってもらわないと。

特派員プロフィール

パッハー眞理(ぱっはー・まり)
ウィーン生まれ、東京育ち。35年にわたる欧州生活から今春インドのニューデリーに移住してホットなインド記事を発信中。『アウガルテン宮殿への道』(ショパン刊)『ニッポンの評判』(新潮新書)、『インディ泥んこウィーン生活』(文芸社)がある。インド外国人特派員クラブ会員。

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