同じ3段に認定されても、人間から見た強さとコンピュータから見た強さは違う。「3、4年前、国際将棋フォーラムでコンピュータ将棋をテーマにした討論会があり、その時パネラーで参加されていた羽生さんに、コンピュータと人間の感じ方の違いについて聞いてみました。すると『何が違うのかはわからないけれど、同じ段位でもどこか違う』とおっしゃった」。この摩訶不思議な違いが何であるかを明確に定義することが、人工知能を考える上で重要な課題だという。
「人工知能と人間の知能は、何が同じで何が違うのか。もっと突き詰めると、知の創造はどこまでいけるのかということになる。今のところ、ある特定の、例えば将棋のようにエキスパートと呼ばれる人がいる分野では、ほとんど限界はないのではないかという気がしています。むしろ曖昧な分野、たとえば常識とか、そういったところに限界があるのではないか。チェスのように高度な知的活動を必要とするところでコンピュータが世界チャンピオンを超えたという現実がある一方、小さな子供でもわかる常識のような部分をコンピュータになかなか理解させられない」。 |