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ユニバーサルデザイン 益田文和

(上)計量カップ(2カップ用)
(中・下)ジャーオープナー
(銀座松屋)

Vol.001 「やられた」のふたつの形

デザインの仕事をしていると、時々「あっ、やられた!」と思うことがある。
その、「やられた」にも2種類あって、1つは、自分自身、あるいは多くの人がうまい解決方法がないだろうかと考えている課題があって、その答えがなかなか見つからず、ずっともやもやした状態にある中で、その問題をさらりと解いて見せてくれたような場合である。「あっ、そうか、その手があったか。いやあ、参った、参った」という意味の、問題解決型の「やられた」である。

一方、うかつにも特に何の問題も感じていなかったところに、いきなり答えを見せられて「あっ、そうか。なるほどこれはいい」と一切を了解させられる、いわば課題発見型の「やられた」である。
どちらも悔しいが、後の方の「やられた」は不意打ちのようにやってくる。ちょうど柔道で、知らぬ間に一本背負いで投げられてしまったようなもので、いっそ気持ちよい。ことにその切れ味が鮮やかだと、ほとんど笑ってしまうくらい愉快になる。

ユニバーサルデザインという言葉の意味はいろいろ複雑だが、私は問題解決型であれ、課題発見型であれ、ソリューションの見事さ、美しさに価値があると思う。道具が使える、あるいは使いやすいのは当たり前で、デザインはそのために多くの努力を払っているのだから、その範囲ではユニバーサルデザインも何も無い。
その使える、使いやすいをポンと飛び越えて「やられた、これだ!」と、思わず破顔一笑するようなものでなければユニバーサルデザインとはいえないと思う。

この計量カップを見て欲しい。何の説明もいらないだろう。OXOというブランドは、グッドグリップと名付けた柔らかい感触の柄をシンボルに、キッチン用品を中心に使いやすさを追求してきた。この例でいえばジャーオープナーが問題解決型、斜めの目盛りを持った計量カップが課題発見型である。いやはや、「やられた」。


益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年

東京生まれ。

1973年

東京造形大学デザイン学科卒業

1982年〜88年

INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任

1989年

世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員

1994年

国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー

1995年

Tennen Design '95 Kyotoを主催

1991年

(株)オープンハウスを設立
現在代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している

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