恐らく私は、大学の卒業論文をワープロで書いた最初の世代だと思います。もう20年あまり前のことで、変換や保存をするたびにフロッピーがカチカチ動くのを聞きながら、ゆったり書いていったのです。文字の変換は遅かったでしょうが、それよりも考えながら確かめながら書くわけで、私の脳の性能のほうが限界でした。画面はもちろんモノクロです。それも黒い画面背景に、文字が白く浮かぶのです。何しろ、MS-DOSで動いていたのですから。しかし、ただいま全盛、高輝度液晶の白背景が良いとも限りません。RGBの三原色が、光量全開で目に飛び込んでくる、目の負担も電力の負担も大違いのはずです。
しかし、パソコンは進化を続けます。マッキントッシュとの出会いは衝撃的ですらありました。マウスを動かせば、簡単に写真を加工できたり、美しいイラストを作成できることを知ったとき、私の人生は大きく変わりました。誰もがグラフィックデザインを、そしてパソコンを楽しむ時代を予感し、本当にその通りになりました。
更に、ワープロや表計算と言った実用ソフトまでもがマウスでの操作中心になりました。もちろん便利ではあるので、ずっと何の戸惑いも無く私も使ってきたのです。
ところが、四十を過ぎてから肩に違和感を覚えるようになりました。別に、テニスやゴルフを楽しむわけでもないので、運動が原因ではないようです。早くも五十肩かと思ったのですが、パソコンのヘビーユーザーである友人から「マウス肩」の初期症状だと教えてもらいました。
試しにGoogleで「マウス肩」と検索してみますと、565,000件(2006年8月6日現在)もヒットして驚きました。多くのパソコンユーザが、右肩から腕にかけて何とも言えない怠さや重さに見舞われ悩んでいると知り驚いたのです。
もう一つ劇的な変化は、ノートパソコンの登場でしょう。私も、歴史的名作、IBM THINKPAD CS230のあまりの小ささに感動して、衝動買いをしてしまったひとりです。たしかに、どこでも持ち運べて仕事ができるのは便利に思えました。しかし、軽くなったとはいえパソコン分の荷物が増えました。
更に小さくなった画面上の文字を、時には動く電車の中でさえ追うという苦行が始まりました。しかもキーボードを打つときは、デスクトップパソコン以上に無理な姿勢が強いられます。猫背で窮屈な指使いを強いられれば、同じ仕事でも2倍疲れます。