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PASMOを利用した乗車履歴連動型のパーク&ライドを実施している「タイムズ幸手駅前」。
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パーク&ライドに対応した精算機。リーダーが2つある(乗車履歴確認用と決済用)のが特徴だ
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「パーク&ライド」とは、自宅から車で最寄りの駅まで行き、近隣の駐車場に車を停めて(パーク)、鉄道やバスなどの公共交通機関に乗り換え(ライド)、都市部の目的地へ向かう移動方法のこと。都市部や観光地などの交通渋滞緩和を目的に、アメリカやヨーロッパでは早くから導入が進んでいる。日本でも自治体や民間駐車場が中心になった取り組み例はいくつかあるが、一般にはほとんど認知されていないといっていいだろう。
だがパーク&ライドは、世界的に見てもこれからの交通システムにおいて極めて重要な方策だと考えられている。公的視点で見た場合のメリットは大きい。都市部への車の流入量が制限されるので、交通渋滞が緩和される。渋滞が緩和されれば、渋滞が原因で発生する経済的な損失も回避できる。また都市部への車の流入量が減少すれば、大気汚染の抑制も期待できる。経済面でも環境面でも、パーク&ライドには大きな期待が寄せられているのだ。
日本でもパーク&ライドは利用価値が高いと思われるが、首都圏近郊から都心部へ乗り入れる形の試みはほとんど行われてこなかった。そもそも駅周辺にそれほど多くの時間貸駐車場があるわけでもなく、あっても駐車料金と電車賃を合わせたら金額がかさんでしまい、利用者にとって魅力が薄かったのである。一方で首都圏沿線の近郊では駅から離れた場所に住宅地がある場合が多く、自宅から駅までの足は車かバス、自転車を利用している人が多いのも事実。駐車場ビジネスの新業態として見た場合、パーク&ライドには確かに時間貸駐車場の潜在的な需要がありそうだ。
ここ数年、パーク24はJR、私鉄を問わず駅周辺にタイムズを多面展開しているので、環境は既に整っている。必要なのは、顧客をパーク&ライドへと誘引するための仕掛けだった。
そこで考えたのが、交通系電子マネーに記録された乗車履歴との連動。今までのパーク&ライドは、電車に乗った証拠として車を出す際に切符を見せる、パーク&ライド専用の駐車券を買うなど、利用に際して一手間かかる煩わしさがあった。交通系電子マネーを使って電車を利用すれば、カードには「どこから乗ってどこで降りたか」という乗車履歴が自動的に記録される。この記録データを駐車場の精算機で読み取れば(実際に必要なのは降車履歴のみ)、利用者が電車を使った証拠となるわけだ。この方法だと、手間はほとんどかからない。
こうした利便性に加えて、パーク24は思い切った駐車料金の優待サービスを打ち出した。いくら渋滞緩和に寄与する、環境保護に役立つと謳っても、顧客自身が便利で安いと実感できなければ利用は進まない。経済面でのインセンティブは必須だった。
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「幸手駅前におけるパーク&ライド利用率」のグラフ。時間と共に認知が進んできたことが分かる
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パーク24は2007年7月から、大阪の「タイムズ住之江公園駅前」で国内初の乗車履歴連動型パーク&ライドの実証実験をスタートさせた。利用する電子マネーは関西圏の私鉄・地下鉄・バスなどで利用されているOSAKA
PiTaPa。精算時に自動的に住之江公園駅または大阪市バスの利用履歴があれば、駐車料金が一律200円引きになり、同時に駐車料金5%分のOSAKA
PiTaPaポイントが付与される。利用者の反応は概ね好評だったが、この試みでは最初に精算機でサービス登録を行う必要があったため、同社が目指す利便性の高いシームレスなパーク&ライドまでは今一歩の感があった。
この実験結果を活かして08年4月から開始したのが、首都圏初となるPASMOを利用した乗車履歴連動型のパーク&ライドサービス。こちらは東武鉄道と協力した本格的な商用サービスで、埼玉県にある「タイムズ幸手駅前」と「タイムズ新座志木」の2ヵ所で実施されている。
利用の手順は、車を駐車場に置いて東武鉄道を利用した後、(1)出庫時、精算機に駐車券を入れる、(2)パーク&ライドボタンを押す、(3)PASMOを所定のリーダーにかざす、(4)現金、クレジットカード、PASMOのいずれかで決済する、の4アクション。実際に利用してみるとまごついたのは最初だけで、2回目以降はスイスイと操作できた。仕組み上は(3)の段階で利用者の降車履歴(幸手駅または志木駅)と駐車日の照合が行われ、データが合致していれば駐車料金が一律200円割り引かれる。終電を利用した場合は日付をまたぐことになるが、もちろん同一日と認識される。
パーク24が公表した「幸手駅前におけるパーク&ライド利用率」を見ると、サービス導入から1ヶ月で利用者が伸び始め、以降は右肩上がりで推移していることが分かる。全駐車場利用者のうちパーク&ライドで精算しているのは約4割。これはかなり高い数字ではないだろうか。
「パーク&ライドの告知については、当社のWeb上と精算機の前面で、更にサービス開始時には、近隣へのチラシ配布とタイムズクラブ会員へのメールマガジン送付を行いました。お客様の口コミ効果も大きいですね。タイムズ幸手駅前の場合は一日の駐車料金が最大で600円ですから、パーク&ライドを利用すればわずか400円で1日車を停めておくことができます。コストバリューが高い点も利用が進んだ理由ではないでしょうか」と袴田さんは分析する。
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