まずは、起業の経緯を教えていただけますか?

私の場合、起業するというよりも、媒体をつくりたいという思いが始まりです。
 女性誌の編集者をしていたころ、誌面はファッションとビューティーが中心で、なかなか政治・経済まで話が広がらない。女性同士でそういう話をする文化が日本にはないのかな、という気がしていたんですが、そんなとき、アジア、欧米など海外で働く女性たちを取材するという仕事をいただきました。取材を通じてわかったのは、日本以外のどこの国も政情不安定なところを抱えているし、海外で暮らす彼女たちはさまざまな差別に直面しながら、自己実現に向けていろいろなことに興味をもって、自分で決定していくという当たり前のことでした。「これが普通なんだ」と思いましたね。
 それで、扱うテーマに枠をはめず政治のこともファッションのことも同じ目線で語るような雑誌、たとえば『Newsweek』や『TIME』のような媒体を働く女性に向けて作りたいと思ったんです。
 実際に1998年頃、雑誌とインターネットと単行本が連動して情報を発信するという新しい媒体の企画書をいくつかの出版社に持ち込んだのですが、反応は今ひとつで、その企画書はそのまましばらく眠っていました。ところがこの話をシンガポールにいる友人にしたら「インターネットだけなら早く安くできるんじゃないの?」と言われて。その頃の私は、htmlって何?という素人だったんですが、その友人のアドバイスで「もしかしたらできるかも」と思ったんです。その当時、出版社を辞めて留学の準備をしていた現編集長の青木陽子も「面白そうだから、手伝う」と言ってくれていましたしね。
 当時、私は出版社で社員として働いていたんですが、最初は二足の草鞋でできると思っていました。ただ、媒体をつくるからには長く続けたい。長く続けるためには、ビジネスにしなければいけない。そのためには、例えばTV番組のように企業にスポンサードしていただくという方法もあるんじゃないかなと思って話をしにいったんですが、「発想はいいんだけれども、会社じゃないと取引できない」と言われました。あまりにも世間知らずでしたね。
 それで、みんなで貯金をはたいて会社を作ることになったというわけです。


当時は女性サイトブームでしたね。

実は、私たちはインターネットバブルや女性サイトブームというものに気づかずに会社を始めようとしていたんです。ところが、ビットバレーのあるMLに「私たちは女性誌編集者の集団で、女性向けサイトを立ち上げようとしていますが、VCの方はコンテンツ・ビジネスにも興味をもたれることはあるのでしょうか」と投稿したところ、翌日から業界の方はもちろん証券会社の方からも、問い合わせの嵐。アメリカで『ウーマンドットコム』や『アイビレッジ』などが上場して注目を集めていたときだったので、このような嵐に巻き込まれた理由はすぐにわかったのですが、それにしても事業計画も何も見せていない段階で、こんなに注目されるなんて変な話だな、と思いました(笑)。自分たちはシーンとしているのに周りに風がびゅうびゅう吹き荒れてる感じでしたね。



当時、雨後の竹の子のように女性サイトが開設されましたが、この半年でずいぶんと淘汰されました。その中でいわゆる「勝ち組」の筆頭が御社の『カフェグローブ』ですが、成功の要因は何だとお考えでしょう?

ただもう「続けたい」という一心ですね。サイトも雑誌と同じく媒体なので、一回産み落とした責任があります。ユーザーの共感を得ながら、ビジネスとして成立させ、続けていくのが使命だと思っています。
 私たちは女性サイトバブルや、他の女性サイトの動きをあまり気にしたことがないんです。『カフェグローブ』と同じことを追求しようとしているサイトが出てきたら、それによって「市場が広がる」と考えていました。面白いビジネスですから、出版社がすぐに追いかけてくると思っていたんですが、その頃はインターネットもITも、それ自体が万能だといった誤解があったようですね。出版社が追随しないのはそのせいかもしれません。
 でもIT自体は単なるツールでしかないんです。むしろ、そこに何を載せていくかが重要ですし、ビジネス面は他の業界と同様きっちり考えなくてはいけない。
 もちろんインターネットでいろいろなことができるのは事実です。雑誌と違ってユーザーと簡単にやりとりができるのは嬉しいし、面白くて仕方がありません。

現在のような経済状況で収益状況はいかがですか?

インターネットが媒体として認知されてきたんじゃないかと感じているんです。これまで業界全体が地に足のついたIT活用ができていなかったために理解が遅れてきた部分があって、私たちが企画説明にいっても「面白そうだね」で終わってしまうこともしばしばでしたが、昨年あたりから、ビジネスのお話が全然違ってきました。代理店さんには、紙媒体と同じように、「ウェブメディア」としてクライアントさんへの提案に入れていただけるようになってきましたし、ECや商品開発についての引き合いが活発になってきました。私たちの側も、広告だけに留まらない提案ができる媒体力がついてきましたね。インターネットは、他の媒体やショップなどと、とても相性が良く、それらを編集・プロデュースするという取り組みも増えてきました。





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