37年の歴史を持つ人生ゲームが、その基本形を全く変えていないことは先に述べたとおり。ただ、時代に合わせ変化するマス目コピーや、細かな仕様変更やバリエーション商品の追加などは頻繁に行われている。ここで人生ゲームの歴史を辿りながら、時々のエポックメイキングな商品をいくつかピックアップしてみよう。
初代に替わる2代目が登場したのは1980(昭和55)年。これは本家アメリカ版の変更に合わせて、内容をモデルチェンジしたものだった。コースは曲線から直線を基調としたものになり、盤面のデザインもカラフルなものになったが、マス目のコピーは依然としてアメリカ版の直訳だった。
人生ゲームの歴史上、最も注目すべきバージョンは、83(昭和58)年に登場した3代目だろう。マス目には初めてオリジナルのコピーを採用。「お世話になった人たちにお歳暮を贈る」「正月休みに4泊5日のスキーツアーに行く」など、内容は日本人の生活習慣に沿ったものとなり、ゲームに対する親近性が大いに高まった。同時に日本オリジナルのルール改訂を実施し、コースを曲線に戻した。これ以降、人生ゲームはアメリカ版から離れ、日本独自の進化を遂げてゆく。
次なる転換点は89(平成元)年にやってきた。この年、折からのアダルトゲームブームを背景に、世相や時事情報を積極的に取り込んだ大人向けの「人生ゲーム平成版」が登場。「晴海でコンパニオンギャルをナンパ」「消費税導入前、大好きな二級酒を買い溜め」など、思わずニヤリとするリアルなコピーが人気となり、40万個を売るヒット商品となった。
以降、平成版は97(平成9)年を除いて、毎年、その年の出来事や流行を取り入れた新バージョンが発売されている。
90年代以降は、平成版の他にもさまざまな企画版が登場している。
例えば、畳一畳分というビッグサイズの盤面を採用した96(平成8)年版の「大人生ゲーム」、阪神淡路大震災、オウム真理教事件など、パロディ化できない深刻な事件が続いた97(平成9)年には「お笑い」パワーで世の中を元気付けようと、平成版に替わって発売された「人生ゲーム関西版」、熱狂的なタイガースファンに向けて発売された99(平成11)年版の「人生ゲーム阪神版」、アントニオ猪木の波瀾万丈な人生をゲーム化した02(平成14)年版「闘魂伝承
人生ゲームアントニオ猪木版」等々。
スタンダード版は家族全員で楽しめ、平成版は大人向け、企画版はコアなファン層を満足させることができる。この多彩な商品バリエーションが、人生ゲームの特殊な商品性を物語っている。人生ゲームほど懐が深いゲームは、ちょっと他に思い浮かばない。
一方、本家筋にあたるスタンダード版も90(平成2)年に改訂が行われ、4代目が登場した。盤面のイラストはシンプルになり、日本独自の世相や流行を意識したマス目のコピーが増加。オリジナル版の要素はさらに高まった。
その後、スタンダード版は97(平成9)年の「人生ゲームEX(エクストラ)」、03(平成15)年の「人生ゲームBB(ブラック&ビター)」などへと受け継がれてゆく。 |