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健康志向商品の第1弾となった「シーチキンお料理番」(過去商品)。
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従来品と比較して油の量を減らして人気を博した「油あっさり」シリーズ(過去商品)。
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現行の健康商品「素材そのまま シーチキンLフレーク」。80g、160円。
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同じくヘルシー系の(左)「シーチキンマイルド(エコナ)」、(右)「シーチキンマイルドキャノーラ」。
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1960〜70年代にかけて「シーチキン」の販売量は急激に伸びたが、新たな問題が表面化してきた。「シーチキン」の原料であるビンナガマグロの資源問題である。この頃、はごろもフーズは日本に水揚げされるビンナガマグロの約半分を消費していた。この状態には無理があるし、「シーチキン」の販売量を更に伸ばすためにも新しい原料が必要だった。
業界では、ビンナガマグロをホワイトミートツナと呼び、キハダマグロやカツオをライトミートツナと呼ぶ。特にカツオは原料が豊富にあり価格が安いため、商品を安く提供できる。「ポストシーチキン」は消費者ニーズに応えるための商品でもあった。81(昭和56)年、はごろもフーズはキハダマグロを原料にした「シーチキンL」と、カツオを原料にした「シーチキンマイルド」を市場に投入。味にはそれぞれ独自のノウハウを導入し、短期間のうちにホワイトミートツナを凌ぐ主力商品に育て上げた。
発売から現在に至るまで、常にツナ缶市場をリードしてきた「シーチキン」。成功の要因は内販戦略よる市場創造が大きいが、常に消費者ニーズを先取りした商品を発売してきた先進性も見逃せない。
一例が、1982(昭和57)年に始まるアルミ製イージーオープン缶の導入。消費者の利便性を考えると、缶切りを使わずプルトップで開けられるイージーオープン缶は是非とも導入したい。だが、品質変化やコストアップの問題もある。はごろもフーズはそうした難題を次々とクリアし、業界に先駆けて、86(昭和61)年にはホワイトミートツナの、その翌年にはライトミートツナの全面イージーオープン缶化を実現した。
また、このイージーオープン缶化に合わせて、小容量の缶を上下にぴったりと重ね合わせるスタック缶も開発。今はこのスタック缶のパック商品が販売の主流となっている。
「シーチキン」は、今は当たり前になっている健康志向型商品の市場導入も早かった。ローファット、ローカロリーをコンセプトに、サラダ油を使用しない水煮タイプの「シーチキンお料理番」シリーズを発売したのは1984(昭和59)年。92(平成4)年には従来品と比較して油の量を減らした「油あっさり」シリーズへと発展し、現在、同社の健康志向型商品はオイル無添加タイプの「素材そのままシーチキン」シリーズと「食塩・オイル無添加」シリーズ、さらには特定保健用食品の花王「エコナクッキングオイル」を使用した「シーチキンエコナ」をラインナップしている。
「シーチキン」の特徴は、そのシンプルな商品ラインナップによく現れている。はごろもフーズはフルーツ缶や各種パスタなど、全部で1000種類以上の商品を販売しているが、「シーチキン」ブランドの商品は、容量の大小やパック商品を除けばわずか24種類にすぎない。その内訳も、基本的には3種類の原料(ビンナガマグロ・キハダマグロ・カツオ)、3種類の形状(ブロックタイプ・チャンクタイプ=大きめのほぐし・フレークタイプ)、大きく分けて2種類の調理法(油漬け・水煮)の組み合わせからなっている。
これらのバリエーションは、ツナ缶が市場に登場した早い時期からあったもの。味に関しても、これが秘伝の味といったものはないという。だからこそ、日常の使いやすさや健康志向など、消費者ニーズを先取りした形で、メーカー自らが市場を開拓していく必要があるのだろう。
ここ10〜15年ほど、「シーチキン」の販売数は横ばい状態にある。それでも「シーチキン」は、はごろもフーズの全売り上げの半分を稼ぎ出し、市場シェアは実に5割を超えている。圧倒的な知名度を持つガリバーブランドなのである。
ここ数年で水産資源不足が再び表面化し、「シーチキン」も値上げを余儀なくされた。それでも、「シーチキン」が私たちにとって最も身近なツナ缶であることに変わりはない。今日もまた、数え切れないほどの「シーチキン」が日本中の食卓を飾っているはずである。
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