20年前に公開されたハッカー映画の古典的存在『ウォー・ゲーム』は、コンピュータに精通した少年が、それとは気付かず北米航空宇宙防衛司令部の核戦略プログラムにアクセスしてしまい、世界が核戦争の危機に陥る…という青春映画の要素も盛り込んだ、コンピュータ・サスペンス。
劇中、暗証番号錠の破り方、お金を入れずに公衆電話をかける方法など、実在のテクニックがいくつか紹介されている。なかでも有名なのが、主人公がゲーム会社のネットワークへ侵入を試みるシーンに登場する手口で、非公開のダイヤルアップ用回線を探すために無差別に電話をかけ続けるというもの。このテクニックは、映画のタイトルを取り、今も“ウォー・ダイヤリング”と呼ばれている。また、ハッカー=いたずら好きの悪気のない少年、という設定が増えたのも、この映画公開後からだと言われる。
さて、その少年が大人になった姿を彷彿させるのが『スニーカーズ』。ロバート・レッドフォード演じる主人公は、元・凄腕ハッカーで、現在は企業から依頼を受けては、その会社のセキュリティ・システムの弱点を探し改善させるコンピュータ技術集団を率いている。
この映画で印象的なのは、厳戒なセキュリティ体制を敷くビルに侵入するための調査方法。何日もかけてそのビルに出入りする人物を観察し、ターゲットを決めたら、ゴミまで漁ってその人の習性を把握するといった地道な手法は、意外なことにかなり現実に近い描写なのだと言う。この映画がハッカー達の間でウケが良いのも、そうした点をキチンと押さえているからなのだ。
リアリティーを追求するならば、実話をベースにした『ザ・ハッカー』だろう。これは、日系のハッカー対策専門家・下村努の書いたノンフィクション小説を元に、彼とFBIが協力して、世界的に有名なハッカー、ケビン・ミトニックを逮捕するまでを描いた追跡劇。
この中では、ミトニックの得意ワザであり、ハッカー達が“ソーシャル・エンジニアリング”と呼ぶ手口が登場する。それは、パスワードなどを調べる際、その企業の関係者に接触し、それらしく相手を信用させて、情報を引き出すというもの。つまり、人間をハッキングするわけだ。
この映画では、原作とは異なり、ミトニックを“知りたい”という思いが強いだけで、決して自分の能力を金儲けに利用しない、純粋なハッカーとして描いている。そんな人物の描き方に、『ウォー・ゲーム』の影響が感じられる。
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