本書は、コピーライターであり、1日35万アクセスを誇る人気サイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の編集長も務める糸井重里氏が、その活動の中から見えてきた“インターネット的であること”の大切さについて、生き方や考え方も含め、ザックリとまとめたもの。著者独特の話し言葉で、肩肘張らずに読める異色の新書だ。
まず気になるのは、タイトルにもなっている「インターネット的」とは何か? ということだが、これを一言、二言でまとめるのは非常に難しい。何しろ、本書1冊の中で、さまざまな角度からこれについての説明がされているのだから。
理解するためのキーワードとして、著者が挙げたのが「リンク」「シェア」「フラット」の3つ。どれもインターネットを知る人であれば使い慣れた言葉だが、そうした当り前の言葉も、著者に説明してもらうと、いろいろと新しい発見ができて面白い。
詳しくは、ぜひ本書を読んで笑ったり、うなづいたりしてほしいのだが、例えば「リンク」では客に良い寿司を提供しようと情熱を燃やす寿司屋さん、「シェア」では肉ジャガ作りが上手な主婦、「フラット」では水戸黄門や自転車修理が得意な社長さんと、分かりやすい例をいくつも挙げ、それぞれの言葉が持つ本当の意味を、「インターネット的」の細かなニュアンスと合わせて、スルスルスル〜と理解させてしまう。 3つのキーワードから見えてくるのは、「インターネット的」な行動や思考のスタイルは、インターネット以前にすでに存在するものだったこと。そうしたことが、インターネットという新しいメディアの誕生によって、よりスムーズにできるようになり、またその良さも改めて浮き彫りになってきたということだ。つまり、「インターネット的」であるためには、インターネットやパソコンさえ必須条件ではないということになる。
本書を読み終えると、日常生活の中で「これはリンクの状態だ」「これはシェアか?」などと思い付くようになるのも、また楽しい点。まずはこうした発見が個人間で増え、次第に企業や社会においても「インターネット的」な価値観が広がっていけば、それが情報社会での本当の豊かさ、ということになるのかもしれない。
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