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COMZINE PICK UP BOOK 今月の1冊『あなたはコンピュータを理解していますか?』 笑えながらも真面目な本とは、これ如何に?絶妙な“例え話”満載の情報処理入門書

おかしな操作をした覚えがないのに「不正な処理を実行しました」という嫌味なメッセージを表示したり、突然動作が遅くなったり、フリーズしたり。便利である半面、謎の行動も多いパソコン。本書は、そうしたパソコンの仕組みや原理をユーモアたっぷりに、分かりやすく解説した情報処理の入門書。

ページを開いてまず気付くのが、目次にある各章のタイトルがすべて“ヘン”であること。「第1章 その味噌汁の塩分はいかほど?」から「第6章 師宣わく『未来は常に移り変わっておる』」(未来は常に…は映画スターウォーズの中で主人公に師匠のヨーダが言ったセリフ)まで、全章に普通のパソコン関連書ではお目にかかれそうもない、ユニークなタイトルが付けられている。
しかし、実はこれこそが本書のミソ。本来なら専門用語がずらり並んでもおかしくないテーマを、誰にでも楽しめる身近な“例え話”を織り交ぜて説明し、コンピュータへの理解を深めようと努めた結果なのである。

では、どんな“例え話”で何を学ぶのか、少しだけ紹介してみよう。
まず、第1章に登場するのはインスタント味噌汁。読み手は、手作りの味噌汁との比較や、インスタント味噌汁に含まれている成分などについての記述を「ふむふむ、そうだなぁ」などと納得しながら読み進めていくうちに、いつの間にかコンピュータの核心にある「情報」と「データ」の違いが分かってしまう。

また、パソコンがどうやって動いているのか、その基本を探る第3章では、段ボールで作った自動販売機もどきの中に人間が入り、一人前の自動販売機として機能するには、何をどう準備しなくてはいけないかを考えることに挑戦。自動販売機になり切って、いろいろな可能性を考え、自分で計算しなくても投入金額やお釣りを間違えない“特別なシート”を作っているうちに、そのコンピュータの動作の基本である「有限オートマトン(自動機械)」と呼ばれる仕組みについても、しっかり把握できてしまうのである。

この他にも、油田のパイプラインやピラミッド型のカースト制度、元気に裸足で歩き回るお坊ちゃま&働き者の爺や、人生ゲームを楽しむ神様達…といった面白い例え話が展開され、「チャネル」「メモリ階層」「インターフェース」などのキーワードが、また一つ、また一つと頭の中に入っていく。

本書を読み終え、パソコンの中でどんなことが行われているのか多少なりとも理解できると、わけも分からずにパソコンを使っていた時とは若干心構えが変わってくる。まず確実に減るのはパソコン前でのイライラ。これまで腹立たしかった謎の行動も、その理由が想像できると案外許せるものなのだ。このため、人によってはそのイライラが原因になって起きていた肩凝りや頭痛、人との口論が軽減するなんて効果も望めるかもしれない?!
このように意外な効能さえ望める本書。パソコンを使う人なら誰でも読んで損はない1冊と言える。

『あなたはコンピュータを理解していますか?』
『あなたはコンピュータを理解していますか?』
梅津 信幸 著
技術評論社/1780円(税別)

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