『シックス・デイ』は、ペットや臓器のクローンはOKだが、人間のクローンだけは法律で固く禁止されている近未来を舞台に、その法律を破り巨万の富を得ようと企む悪徳企業と、それに巻き込まれ自分のクローンを作られてしまった男との戦いを描いた作品。
劇中に登場人物と同年齢・同記憶のクローン人間が出てくる場合、それがどうやって作られたかに注目が集まるが、本作品ではかなり独創的な方法が用いられている。まず年齢については、あらかじめ人の形をした“入れ物”を大量に培養しておき、そこに対象人物のDNAを流し込むと数時間で同じ外見の“人間”が完成。記憶は、検眼機のような機械を使って、光反射作用から脳の記憶情報を瞬時にコピーする。
この2つの技術を使えば、いつでも完璧なコピーを再生し不老不死になれるが、どちらも実現化はかなり難しそう。ここで何となく安心してしまうのは、もはやクローン人間作りが未来の物語ではないことを実感しているからなのかもしれない。
逆に、そうした心配を全くしないで楽しめるのが『クローンズ』。仕事が忙しくて家族との時間を持てない男が、偶然出会った科学者に自分のクローンを2人(後にクローン人間のクローンが1人加わる)作ってもらい、会社勤めや家の仕事を分担させる…というコメディだ。
クローン作りの描写はかなり大ざっぱで、血液情報と大型スキャンで読み取った体格情報を組み合わせ、2時間ほどで本人と同年齢・同記憶のクローン人間が完成。しかも、このクローン達は個性豊かでもある。ワーカーホリックでマッチョな2号、家庭的で優しい3号、2号のクローンで天真爛漫すぎる4号と、それぞれに本人の性格の一面を受け継いでいるのだが、生活の中でどんどん別の人格になっていくのだ。
クローン達の極端なキャラクター設定は笑いを盛り上げる演出の一つ。しかし一方で、クローンも個別の人格を持ち、それぞれに幸福を求める権利があることも描いて、作品全体をきっちりまとめている。
最後に紹介するのは、完結したシリーズを続行させるための強行手段としてクローン技術を利用した『エイリアン4』。あの宇宙怪物エイリアンを生み出したSFホラーの人気シリーズ第4作だ。
第3作のラストでクイーン・エイリアンの幼生を体内に埋め込まれ、溶鉱炉に身を投げて死んだ主人公は、当時の血液サンプルが冷凍保存してあったという設定で、クローン人間として復活。同時にその体内からクイーン・エイリアンも取り出され、武器利用をもくろむ軍関係者によって繁殖計画が進められる。
本シリーズの特色は、クローン技術を用いたことで、主人公・エイリアンともにお互いの遺伝子の影響を受け、進化している点。血液中のDNAからその人物だけでなく、その人の体に寄生していた生物まで作り出すことは可能か? という疑問はぬぐい去れないが、やはり、そこは本作品に不可欠なエイリアンを蘇らせるためのミラクル技として納得すべきなのだろう。
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