アポロ11号による人類初の月面着陸より1年早く公開された『2001年宇宙の旅』は、巨匠スタンリー・キューブリックの代表作の一つ。35年前の作品ながら、今見ても驚くほどリアルで美しい宇宙が描かれている。
もちろん、すべてが完璧なわけではない。例えば、月の地形が本物の景色よりもギザギザすぎたり、木星の姿が地球から望遠鏡で見た時と同じようにぼんやり霞んでいたりする。しかし、本作品の撮影が始まった1965年末の時点では地球上で誰一人、月や木星を間近に見たことがなかったことを考えれば、このぐらいは仕方ないと言えるだろう。
「SFは絵だ」という言葉があるが、本作品はまさにそれ。謎めいて難しいストーリーも、この映像の素晴らしさの前ではどうでもいいような気がしてくる。
ちなみに、アポロ11号には月面着陸疑惑説があるが、これを唱える人々の間では、人類が月に降り立ったあの歴史的映像は、NASAの極秘委託を受けたキューブリックが撮影したのだと囁かれている。こうしたまことしやかな噂が流れるのも本作品の映像力あってこそ。監督にとっては最高の賛辞ではないだろうか。
一方、『アポロ13』は“輝かしい失敗”と呼ばれたアポロ13号のフライトを、実話に基づいて映画化した作品。アポロ13号に乗り込んだ3人のクルーとNASAの管制センター職員達の奮闘を描く感動的なストーリーはもちろん、ロケット打ち上げ時の映像や宇宙空間を飛行するロケット内の様子など、リアルな描写も楽しめる。
なかでも注目すべきは無重力シーン。キャスト達の動きも自然だし、どうやって撮影したんだ?…と思いきや、NASAが宇宙飛行士訓練用に使う装置を利用して、本当の無重力状態で撮影したとのこと。まさにリアリズムを追求した1本。
リアリズムという点では『ミッション・トゥ・マーズ』も負けてはいない。こちらは火星探検モノだが、企画・脚本から実際の撮影に至るまでNASAが全面協力している。
見どころは赤茶けた火星の描写。実際には砂漠で撮影されたとのことだが、NASAの広報映像に忠実な出来栄えになっていて驚かされる。宇宙空間で船体に落ちる影や、無重力空間に飛び散った血液の固まり具合も、本物の映像を研究してCGで再現。劇中、地球から火星に着くまでに6カ月かかっているが、これも事実に即した数字だと言う。また、無重力シーンは、『アポロ13』のリアリティーには及ばないものの、無重力空間でのダンスを取り入れるなど雰囲気を伝えるための工夫がなされている。
本作品では火星に“水”が発見され、ここから物語が大きく展開するのだが、実はこの映画の公開後、NASAも無人探査機によって火星表面に水らしき物の痕跡を発見している。これで火星人登場! となれば面白いのだが、それはいくら何でもできすぎ?
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